年金という難解なシステムを分かりやすく解説した年金の書籍の中では名著。年金の仕組みを知りたい初心者の方にお勧め。Q&A方式で初歩的な質問から難解な質問まで全18個の質問が書かれている。年金は貰えるの?年金は破綻はないの?初歩的な平易な言葉で書かれている。僕自身、年金を払うべきか払わないべきか悩んでいた。この本に書かれている1960年以降、生まれの人は年金で損をするという一文は衝撃的だった。ある意味で年金の羅針盤となる本書。年金で悩みがある方にはお勧めです。
つまり、現役世代に払った保険料が、旧社会保険庁に蓄えられ、それを原資に運用していくらか増えた金額が、老後に個人に支払われる仕組みであると多くの人々が思っているようです。ところが、実は、年金制度はそのような仕組みではありません。驚くべきことに、国民ま多くが信じていることは、まったくの誤解なのです。実は、若い頃に払った保険料は、旧社会保険庁に蓄えられることなく、支払った瞬間に、すべて煙のごとく消えてなくなってしまいます。(中略)わが国の年金制度では、現在の現役層ーたとえば2010年の若者が支払った保険料はすべて、2010年に生きている高齢者の年金を支払うために使われているという仕組みになっています。つまり自転車操業というわけです。専門用語では「賦課方式」と呼ばれているそうですが、年金は積み立てられることなくそのまま高齢者の年金に回っています。本来、日本の年金制度は積み立て制度で運用されていましたが、それが政治家の大盤振る舞いにより、積み立て金が540兆円もの巨額の資産が使われた計算になります。よく、グリーンピアや福祉施設が槍玉に挙げられますが、本質はこちらに問題があるといっても過言ではありません。
Q年金は得な制度なのでしょうか?損な制度なのでしょうか?
たとえば1940年生まれの世代では、生涯に3090万円の受け取り超過、つまり得をしていることがわかります。この金額は生まれ年が後になるにしたがって減り、1960年生まれでちょうど損得なしとなります。もっとも若い2010年生まれの世代では、どちらの改革が行われようとも、2370万円から2840万円の損になります。つまり、1940年生まれと2010年生まれの間の損得の差は、実に5460万円から5930万円という途方もない金額に達しているのです。年金を源泉徴収で払っている会社員の方、特に新卒の方には寝耳に水でしょう。国民年金に加入している若い人は払うか払わないべきかすごく悩むと思います。実際、国民年金の未納率は4割を超えているそうです。4割も滞納していたら破綻するのではないか?そう思う方も多いと思いますが、払っていない方は結果的に年金を貰わないという結果になるので年金が成り立つそうです。といっても年金の国庫負担率、つまり国民の税金から支払われている分は1/3を超えているわけですから、その分だけ支払っても支払わなくても損という事になります。若者はどっちみち損。老人ウハウハという構図です。
Q基礎年金の税方式で、本当に消費税は17%になるのでしょうか?
年金財源の税方式が俄かに注目を集めきました。よく、全額税方式にしろ!という人がいます。消費税17%そんな大風呂敷を広げる人もいます。しかし著者は真っ向からこの案を批判します。絶対にない!と…。正確に言えば全額税負担で支払いは軽減するといえるでしょう。それは、4割を超える年金未納者から徴収できる事。それに加えて裕福なお年寄りからの徴収も可能になるという点です。結果的にどんな年金ストーリーを民主党が選ぶのか分かりませんが、今の年金制度は確実にいびつで不公平なものだという事は事実のようです。
Q年金制度を積み立て方式にする事は可能でしょうか?
著者は未来の年金制度を現行の「賦課方式」から「積み立て方式」にする事を提案しています。自分が必要な年金は自分が生きている間に積み立てておくこと。これが大切だと主張します。勿論、受け取った年金は銀行預金のように放置するのではなく、しかるべき場所で運用する事が望ましいでしょう。ノーリスク・ノーリターンか。ハイリスク・ハイリターンか。これは国が決めるべきものではなく国民が選ぶべきだと著者は指摘します。それに加えて裕福なお年寄りから徴収する。相続税が徴収するという案も提案されています。国庫負担分は相続税から徴収するカナダの「クローバック制度」を参考にするといいそうです。
年金問題は国の問題ではなく我々1人の1人の国民の行動によって決まるといっても過言でありません。大事なのは知識武装をし、官僚や政府に騙されない目を養うことです。本書はその意味でもとても興味深い1冊と言えるでしょう。イロハで言えば、イロまではこの本1冊で理解できます。その後は専門書をご覧ください。
おわり。