TPPが日本を壊す (扶桑社新書)
廣宮 孝信
扶桑社
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野田政権によるTPPの締結。時代に遅れてはいけない。社会人として必要最低限の情報は入れておきたい、という思いから本書を手に取った。アマゾンでは在庫切れ。かなり売れているのだろう。本書ではタイトル通りに、TPPに反対の姿勢を示している。TPPのメリット・デメリットを列挙してある。基本的にTPPのメリットは大企業にあり、デメリットは農家や労働者にあると説明されている。日本経済の事を考えるとTPPは十分なメリットを享受できるかもしれない。しかし、国民の同意なくこの締結に進むのはいささか、強引なのかもしれない。

まず、TPPに関する説明が必要かもしれません。

TPPとはつまり、「環太平洋戦略的経済協定」の略です。簡単に説明すると国ごとに違う関税を撤廃し自由な貿易を行おうというものです。現在参加を表明しているのは、日本を含め、アメリカ、カナダ、シンガポール、オーストラリアなどです。日本は先日、野田総理がオバマ大統領との会談で参加を表明しましたが、今だに態度は中立です。参加するニュアンスを含みつつ、農家や皆保険などの障害が重荷になっているようです。簡単に説明すれば、TPPでメリットを享受するのは日本の大企業です。関税が撤廃され自由に商品を売り買いできるメリットがあります。対して、デメリットは国民や農家にあります。TPPが締結されれば、外国から安い食料品や低付加価値品がどっと日本に流れ込んでくる危険性があります。その筆頭が日本人の主食であるお米ですね。お米には現在779%という高い関税がかけられています。

つまり、外国でいくら安いお米が生産されたところで日本にはなかなか入ってこれない現状があったわけです。
しかし、TPPでは原則として全ての商品の関税を0%にするという規定があるため、もしTPPが締結されれば外国で生産された安いお米が入ってきます。ベトナム産のコシヒカリなんていう商品を目にする機会があるかもしれまん。これは農家にとって死活問題でもあります。僕自身、農家ではないので細かい事は分かりませんが、日本の小規模農家は太刀打ちできないのではないでしょうか。TPPに反対する多くの人が問題にあげるのが農家の問題です。農家を切り捨ててでも日本の財政を回復されるという意気込みの表れでしょうか?

もう一つの問題点が公共事業です。
TPPに加盟した場合、公共事業において国際競争入札を行うという規定があります。つまり、日本の建物や公共物を海外の会社が受注する可能性があるという事です。この場合、賃金の安い新興国の労働者を連れてくる可能性もあり、よくいわれるケインズ的「公共事業での景気回復」といった事が事実上不可能となります。

TPPでメリットを受けるのは大企業。デメリットを受けるのは農家や国民という事が分かりました。ただ残念だったのが、本書で語られている情報が薄いという点です。メリット、デメリットが紹介されていますが、具体的な企業名や個人名を出して紹介されていないので、あまり実感は湧きません。良い意味で新書的といいましょうか。この本1冊でTPPを理解するのは無理があります。TPPに興味のある方はもう少し専門的な書籍を読むことをお勧めします。一つこの本で問題点があるとすれば、後半に書かれている「大阪都構想」についての記述です。この部分はTPPと関係ないですし、批判の説得力もイマイチでした。著者が大阪の橋本知事が好きでない(著者は大阪在住らしい…)だと思いますが、たった数ページで大阪都構想や大阪市の平松市長を天秤にかけることはできません。

入門としてのTPP本としては最適な1冊かと思います。