体制維新――大阪都 (文春新書)
橋下 徹・堺屋 太一
文藝春秋
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大阪府民、大阪市民必読書です。大阪ダブル選挙を前にその当事者である橋下さんの考えが知れる。僕は大阪の橋下さんは独裁者的な存在かと思ってた。権力を振りかざし、自分の意見に反対なものは次々に切り捨てていく。大阪市長選参加も平松市長を蹴落とすための一種の戦略だったのかと思っていた。しかし、本書で語られる橋下さんは誠実で人の意見をよく聞く。(本人が書いたのだから仕方ない部分もあるが…)徹底的に議論を尽くして結果を導き出す姿勢が表れている。最終的には政治判断で決める。今しか読めない1冊かと思います。

大阪の橋下さん(市長でも知事でもないので、そう呼ばせてもらいます。)と言えば僕の中では独裁というイメージが強かった。自分のやりたい事は意地でもやり通すそんな印象だった。過激な発言もそれを表している気がした。「クソ教育委員会」「ぼったくりバー」なとどいった表現がその一例かもしれない。しかし、本書で語られる橋下さんの知事としての4年間はとても誠実で清らかなものだ。職員と徹底的に議論をする。大阪の伊丹空港廃止、WTC買取など話題にはこと足りなかった4年間。大阪を財政の危機から黒字体質に変身させた。4年間の中で大阪市と大阪府との関係に限界が訪れたのかもしれない。大阪府と大阪市の2重構造。よく、テレビやメディアで言われている事だ。橋下さんが目指す「大阪都構想」それが正しいものなのか?それは分からない。それを決めるのは11月27日。200万人の大阪市民と500万人の大阪府民でしょう。
既に機が熟したとされるものは、思い切って判断を下すこと。このような判断に対しては、前述したような「独裁的」との批判を受けますが、僕の判断が適切だったかどうかは、選挙で有権者の審判を受ければいいと思ってます。
とても当然な回答ですね…。

簡単に大阪都構想とは何なのか?説明しておこう。

つまりは、大阪市を解体し大阪市を東京都と同じような行政区に変更しょうとするもの。それを提唱するのが橋下さんで、反対するのが大阪の平松市長という構図です。はっきり言って、大阪都構想が大阪の未来を明るくするものなのかは分からない。しかし、区長が大阪市役所の職員。区長を市民が選べないという点には問題があるような気もする。橋下知事は、大阪都構想でより住民に近い行政を目指しているのだと思います。小さいことは行政区で…大阪全体の戦略や方向性は大阪府で対応する。言葉にすれば、とても理想的に見えるのが怖い。

本書の中では大阪維新の会が大阪府議会で過半数の議席を獲得した経緯が書かれている。国を変えるにはある程度の力が必要だ。いくら良い政策やプランがあっても力がなければ意味がない。東京都知事選に立候補した大前研一氏がその例でしょう。その点では橋下さんは世渡りがうまいと言えるのかもしれません。

橋下さんは、以下の3点にもとに意思決定を行っているそうです。
1.原則は行政的な論理に勝っている方を選択する。
2.論理的に5分5分ということになれば、僕が政治的に選択する。
3.行政的理論に負けていても、これはというものは、政治決定で選択する。
大阪の橋下知事が言う事は、人口200万人を超える大都市には細かい行政対応は難しいという事。旧態依然として体質を持ったのが大阪の平松市長。新聞によれば、大阪市長選はやや橋下知事有利の展開らしい。その一方で旧態以前とした体制を望む大阪市民がいる事も忘れてはならないと思う。いくら、大阪市長が鉄のトライアングルで選挙を有利に運ぼうととようが、水道事業を統合しなかろうが、現在の大阪市を愛している人もいる。

つまり、その方針を決めるのが大阪市民なのです。

橋下さんは、現代版「版籍奉還」と「廃藩置県」を行おうとしている。すべての身分をいったんフラットに戻す。農家でも金持ちでも誰もが大阪の政治に参加する社会をつくる。大阪市を大阪都にする事で、現代版「廃藩置県」を行おうともしている。橋下知事が「行列のできる法律相談所」に登場したとき、色眼鏡で茶髪。なんていうちゃらい男なんだろう。と思っていましたが、10年近い歳月を経て、大阪を変える立場にいる事を誰が想像したでしょう。
行政職員がどれだけ一生懸命に頑張ろうとも、今の日本の政治機構、システム、体制は、140年前の明治維新に原形ができたままです。高度経済成長時代までは、このシステムはうまく機能していたのかもしれません。しかし、現代の世は、明治維新から当然のこととして、高度成長時代から大きく変わりました。日本は余裕のあるアジアのリーダーではありません。(中略)選挙で選ばれた者は、何をやらなければ決断力がない、実行力がないと批判され、実行すれば議論しろ、独裁だと批判される。どうせ批判されるなら、やって批判される方がいい。僕は大阪都に挑戦します。
いざ、11月27日へ!