皆さんは、公共事業というと、どんなイメージを抱くだろうか？「談合」「天下り」「ムダ使い」この３点セットを思い浮かべる人が大半だろう。いつの頃か公共事業が悪魔のささやき、悪魔そのものになっていた。しかし、本書「公共事業が日本を救う」という本は、真っ向から公共事業を肯定する。まさに、公共事業が日本を救うのだ！！
僕も含め、公共事業に対して否定的な意見を抱いている人の大半が情報源としてるのは「テレビ」「新聞」といったマスメディアからの情報だろう。しかし本書を読むと、テレビや新聞を鵜呑みにするのはよくないなと痛感する。日本が借金地獄になった原因があたかもムダな公共事業の連発のように思えてくる。しかし、統計やデータを元にすると公共事業の予算は年々減少を続けており。年間で５兆円を割り込む数字になっている。本当の原因は高齢化で増大する「社会保障」が赤字の主たる原因とされている。民主党政権誕生直後、当時の鳩山内閣が打ち出した「コンクリートから人」へのスローガン。しかし、公共事業は縮小しているのだ。この時点で矛盾が生じてしまう。公共事業を全て廃止すればいいのだろうか？
本書では実際に公共事業が不用なのか？日本の道路が高額になっている理由、墜落した港湾事業、国の借金問題まで公共事業を軸に解説されている。スウェーデンやデンマークといった都市が快適な理由。公表燃費の６０％しか出せない日本の車、道路事情。渋滞のために年間１２兆円の損失をこうむっている事。これは、ドライバーに対して行ったもので、渋滞が解消されるなら幾ら払っても良いか？という質問をまとめたものだ。郊外の巨大ショッピングモールに車で外出する人々。原宿の最先端が田舎のショッピングセンターで買える時代なのだ。その一方で錆びて朽ちていく商店街。著者はこの原因を都心に車を流入させた点だと指摘する。
その解消として、都心部を囲むように環状道路を設置し、そこに巨大な駐車場を設置するのだと説明する。
この本で一番興味深かった点が、日本の借金に関する部分だ。
今、日本の借金は８００兆円だったか９００兆円だったかあるらしい。それに対して、著者はこう説明する。
政府の内債であるが、これは政府側から見れば「負債」であるが、貸している側から見れば、これは「金融資産」である。(中略)よく、赤字国債という言葉が使われるが逆の意味では、それを買っている国民や金融機関は同等の資産を持ってる事になる。これは目から鱗が落ちる話でした。で、結局のところ、公共事業は日本にとって必要なんでしょうか？
正確に「国民１人当り」の借金を言うなら、
国民１人当り、４０９８万円(＝５２４６兆円÷１．２８億人)の「借金」があり、
国民１人当り、４２１９万円(＝５４９３兆円÷１．２８億人)の「金融資産」がある
デフレの時こそ公共事業。確かに、談合やムダな公共事業は沢山ある。しかし、景気を回復される起爆剤としての「公共事業」は日本にとって必要なのではないか？
公共投資をする以上は、経済への短期的な�爛�ンフル剤″として機能するだけでなく、「その投資によって�狆�来の経済成長を促す″ようなものであること」が重要だ。この点については、道路も、港湾も、ダムも、橋も、経済活動や生活のインフラとして大いに�猊�要〃とされている。そうである以上、それらへの投資は、現在の経済を活気づけるだけではなく、将来の日本経済の発展にも多いに貢献し得るのである。結局、国のお金というのは国民に配るか、投資するか、しかないと思うんです。
■ひと言書評。
公共事業という考え方を改めさせられる。分かりやすくて刺激的です。
私自身は、公共事業は推進するところは大いにやれ、派なのですが世の中には一定の割合で感情的な公共事業反対派がいます。
で、そういう人たちは政府の借金を国民の借金と混同して、デタラメな言説に惑わされがちなことに非常に憂慮しています。社会人になってからは、意識して様々な本を読んでみるのですが、世の中いかにデタラメが横行しているかを深く痛感する次第です。