国民ID制度が日本を救う (新潮新書)
前田 陽二 松山 博美
新潮社
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少し前、日本では「年金記録」の使途不明が問題になった。転居すれば住民票を窓口へ、年金支給も窓口へ21世紀も10数年が経っても行政のサービスは営利企業のそれとは正反対の位置にいる。「国民ID」つまり、生まれた赤ちゃんに対して国民番号を付与するというものだ。これが行政を効率化し、社会、日本を救う。これが本書の基本的な主張だ。一部では賛成派、一部では否定派。肯定派の人の立場からすれば「行政が効率化されて助かる」という意見が聞かれる。否定派の人からは、「個人情報の管理が心配だ」という面がある。先日も、ソニーのネットワークサービスから1億件近いデータが流失した事件は記憶に新しい。もしこれが全国民1億2500万人の情報だったら大変な自体になる。それにしても、信用のできない政府だ。

国民IDが実現すれば、年金も医療も銀行口座のカードも全て国民IDで事足りてしまう。マイポータルといったパソコンの仕組みを利用する事で、自宅にながら住民票の移動もパスワードとID番号で事足りてしまう。、あちこち書類を取りに回るオリエンテーリング状態が解消されるのだ。もしかすると、学歴も病歴も1枚のIDカードで事足りてしまう可能性がある。それは怖い面もある。クレジットカードのランクによるステータスではないが、そこには新たな格差社会(ランク社会)の到来が起こるのかもしれない。本当の意味で個人の時代が到来するのだ。家族が最小の社会だった時代は終わり、カードが社会の始まりを意味する。

ただ、これを決めるのは国ではなく、国民だろう。僕は、そう思う。

本書のタイトル「国民IDが日本を救う」。これはいささか大げさかと思う。もっと議論が必要だ、もっと知識が必要だ。今回は点数の評価と言うより、本書で得られる情報が国民IDに関する全体の4割という点だ。もっと情報を盛り込んでもよかったのではないだろうか。基礎編としてはお勧めできます。