全国民必読と書かれているが、このバイアスが読者に混乱を起こしている危惧がある。内容的にはニュースに書かれている政治・経済に関するマスコミ報道がいかにウソであるか、という類のものだ。ただ、取り扱っているジャンルが政治・経済という事で全ての国民が読んで理解できるかには疑問符が付く。書いてある事が本当かどうか判断するのが素人には難しいからだ。でも政治にも経済政策にも問題があるのは確かだと思う。
第1章 「日本破綻論」にだまされるな(「日本の借金1000兆円」のウソ
「財政赤字の拡大が問題」のウソ ほか)
第2章 いま起きている円高の正体(「円高は強い円の表れ」のウソ
「破綻寸前」といわれる日本が、なぜ円高なのか ほか)
第3章 デフレから脱却できない本当の理由(日銀がお金を刷らない「深いワケ」
ウソとごまかしの金融政策 ほか)
第4章 ニュースが伝える世界経済の裏を読め(メディアが口を閉ざす欧州危機の真相
自業自得のギリシャ危機 ほか)
今、日本は未曾有の不景気に陥っている。野田首相(もう読者がこの記事を読む事には変わっているかもしれないが…)が消費税5%増税を政治課題としている。超円高が日本企業の業績を圧迫し、輸出依存の高い会社は赤字、もしくは生産拠点の海外移転を進めている。パナソックにやソニーといった日本を代表する巨大企業が巨額な赤字を計上した事は我々庶民を驚かさせた。本書ではそんな経済ニュースのウソを見抜くための方法、もしくは理由が書かれている。しかし、冒頭でも書いたように、この本を読んで「マスコミはウソばっかりつきやがって!」「マスゴミめ!」と非難するのは一歩、待った方がいいと思う。基本的に本書で語られている事の多くが、経済停滞の理由は「日銀がお金を刷らないから円高になっているのだ」という事に尽きる。日銀が悪い、日銀か悪い。それは強く伝わってくる。これは、高橋洋一さんの本にも書かれている事だし、ある程度、経済の専門家なら常識なのかもしれない。それに加えて、日本が借金1000兆円の嘘も理解できる。国債は国とっては負債であってもそれを所持する者には資産になる。日本国には多額な資産がある事も衝撃的な内容だった。

ただ、我々は日銀に圧力をかける事も日銀にお金を刷らせる事もできない。
ましてや日経新聞すら読んでいない人が大半だろう。(読売・朝日・毎日辺りが3強か?)前々から言われているように、マスコミの報道は記者クラブ垂れ流しだという事は知っている。経済の知識も専門家でもない人が記事を執筆している事も知っている。しかし、だからといって1次情報をネットに頼るのは危険だと思う。この本は経済ニュースを普段から新聞を盲目的に信じている人には有効だと思う。全国民というタイトルがマイナスポイントだ。本当に全国民に読んでほしいのなら、池上彰さんくらいまでレベルを落とす必要があるだろう。

個人的な意見を言えばハードカバーで発売するよりも、新書で発売した方が刺激的だったと思う。
この類の本は1冊を読んで鵜呑みにするのではなく、何冊か読み比べて判断する知識を付けるのが賢明でしょう。その1冊としては、とっつき易い本だと思います。