非選抜アイドル (小学館101新書)
仲谷 明香(AKB48)
小学館
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今や、テレビで「AKB48」を見ない日は無いだろう。音楽からドラマ、バラエティまでその幅の広さはすごい。今の音楽界において、唯一ミリオンを達成できるグループとも言える。あなたは、どのメンバーが推しメンだろうか?まゆゆ、優子、ぱるる、ともちん、挙げたらきりがない。ただ、世間一般的に知っているのはメディア選抜。最近では、総選挙で上位に食い込んだ10人〜20人程度だろう。しかし、「AKB48」に合計で200名近い在籍者がいる。その総選挙で選ばれなかった大多数のメンバーを「非選抜」と呼ぶ。本書「非選抜アイドル」は、そんな日の目を見ない「AKB48」の裏側に迫った本だ。著者である仲谷明香は、総選挙でも名前も投票数も発表されない立ち位置にいる。

そんな状況を彼女はこんな言葉で表現している。
「おもしろい」私は、それが良いことなのか悪いことなのか分からないけど、非選抜メンバーになったことを「おもしろい」と感じてしまったのだ。
元々、アイドルに興味があったわけでも、歌手になりたかったわけでもない。両親が離婚し、田舎から千葉に引っ越してきた。学校に馴染めず休みがちだった。いつの日か声優になりたと思っていた。声優学校に通っていた時期もある。しかし、シングルマザーにとって毎月の月謝は高かった。「もう通わせてあげられない」、そんな母の言葉が胸を刺す。別の言い方をすれば、夢である「声優」になるための一歩としてアイドル=「AKB48」を利用した。顔が人一倍かわいいわけでもなく、人一倍うたが上手はわけでもない。ただ、自分にできる事を愚直に行った。過酷な練習や講演をこなす。日常の仕事である「劇場」での公演に全精力を注ぐ。自分のできる事を、自分の精一杯の力をこめて行う。「ウサギとカメ」の話で言えば、はなっから自分の事をカメと割り切っている。敗者にこそ責任がある。
その意味で、真の敗者というのは誰にでもなれるわけではないと思った。敗者としての責任を果たした者だけが、始めて敗者として認められるのだ。逆に言えば、責任を果たすことができれば、敗者にも居場所が与えられるのである。敗者の責任を果たしていれば、たとえ非選抜メンバーであろうとも、「AKB48」のメンバーとして生きていくことができるのだ。
勿論、メディア選抜が努力をしてないとは言わないが、こういう裏側で必死に努力をして夢を掴む人がいるのだ。ある意味で「AKB48」は、社会の縮図と言えるのかもしれない。華やかな裏で、努力がない者は去る。その一方で、努力が評価される世界なのだ。僕らも、夢や希望を持って生きている。でも、どこかで「いゃ俺は無理だから」「いゃ私は無理だから」という理由で目の前の事から逃げていないだろうか?漫画ワンピースが評価される一番の理由は、ゴールド・ロジャーが残した一繋ぎの大秘宝を純粋なまでに信じている点だ。僕らも様々な状況を「おもしろ」と思えるだろうか。「おもしろい」と思えたら、こっちのもんだ。