成功の法則92ヶ条 (幻冬舎文庫)
三木谷 浩史
幻冬舎
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楽天市場と言えば、食品から家電までありとあらゆる商品を扱うネット商店だ。僕自身、ヘビーユーザーで会員ランクは「ダイヤモンド」を維持している。最近では、讃岐うどんだったりピザだったりを頼んでいる。家電だってものよれば、価格.comなどよりも安い場合がある。流通総額1兆円を越え、全世界へのサービス展開を目論む楽天を率いるのが、創業者であり本書の著者である三木谷社長だ。

楽天の創業は最近のネット企業には珍しく20世紀の終わりに近づいた1997年と古い。当時、業界では大手がこぞってネット通販に参入し、失敗していた。業界内では「ネット商店は終わった」と思われていた。そこに三木谷社長は月額5万円という当時では破格の安さでネット通販に参入した。最初の売り上げは約30万円。そのうち三木谷社長が買ったものが半分だった。そんなんじゃ儲からないよ!と思うかもしれないが、ネットで10万円近い買い物をしてくれる人がいる。その事に感動したらしい。

最近、サイバーエージェントの藤田社長の「起業家」という本を読んだ。レビューを読んでほしいが、彼は利益を最大化を目標にするのに対して、三木谷社長はネットの力を使って世の中を良くする事、そして夢を実現する大切さを説く。どこかSoftBankの孫さんに似ている部分もあるけど、この本がすごいと思った点は、勿論、経営者として素晴らしいのは言うまでもないけど、日本で最も泥臭い会社が楽天なんだと思った。

夢や目標に対して、こんな言葉がある。
夢はそれを抱く人も成長させる。夢や目標を実現するために力を発揮することが、人をどれだけ成長させるのかを僕はこの目で見てよく知っている。生きている限り、人は夢を抱き続けるべきなのだ。そして、その実現のために。命を終える日まで。歩み続けるべきだ。
会社を経営する事がイコールお金を稼ぐ事。私利私欲を増やす事だと思っている人は多い。そういうイメージが「金持ちは悪い事をしている」という事に繋がるのかもしれない。働く事はお金を稼ぐ事ではあるけれど、それは自分の夢や目標を達成するためにある。働くという事は自分の夢を実現するため、会社はその夢を実現するためにある器なのかもしれない。iPhoneだって月に5千円も払えば使える、パソコンだって数万円で買える時代だ。食べ物だって余っている。その上で働く事の意味はなんですか?と問われれば、それは自己実現、もっと簡単に言えば、「夢を実現するため」だと答えるだろう。楽天というと金融だったり銀行だったりを展開しているので、さぞお金にうるさい企業なのかと思った。しかし、この本で綴られている三木谷社長の言葉は夢や希望に溢れていた。もう一つ、こんな言葉がある。引用してみょう。
会社はひとつのビジョンに共感し、志を共にする人々が集まる場だと思っている。そのビジョンや志を遂げるために、ひとつの目標に向かって進むことを自分の意思で選んだ人の集う場、それが僕の理想とする会社だ。ただし、同時にさこで働くひとたちが、それぞれ幸せにならなければ意味がない。
毎週、全社員がデスクを掃除する習慣があったり、エレベーターの止まる階を制限したり、もの凄く泥臭い一面がある。僕はそういう一面に惹かれてしまった。楽天の成長がこのまま続くのかは不透明だけど、少なくとも読む前よりも楽天が好きになっていた。会社とはお金を貰う場所、そう思っている人には刺激的でとても良いと思います。若手の経営者とか新入社員にはおすすめです。よくも悪くもワンマンという指摘もあるけど、ベンチャー企業は総じてそうだろう。だからこその爆発的な成長だと思います。