技術革新は我々の生活を大きく変えた。エジソンによる電球の発明、活版印刷の登場によって庶民でも聖書を読む事ができるようになった。それにより聖書の矛盾も分かるようになった。ローマ帝国の繁栄、コロンブスによるアメリカの発見。本書では、内容の半分以上を歴史に割いている。そして、21世紀に入り国家を無視した超企業が誕生する。そして本書のテーマにもなっているように、テクノロジーとの共犯が始まった。レイヤーという聞き慣れない言葉、そしてウチとソトとの境界線が急速に薄れつつある。
(場)は、ウチとソトを分けず、境界線もなく、無限に広っがていくだけで、実にとらえどころがありません。上から「こうしろ」「ああしろ」と言ってくる権力者はいないし、自分の居場所もはっきりとしていません。
テクノロジーが起こした革命は(場)を破壊し、20世紀のシステムを破壊していく。最初に飲み込まれたのが音楽業界。今までだったら音楽会社がこういう曲を作ろうといったプロデュースをするが、音楽の配信はCDから急速にiTunesに代表されるネットに支配されていった。そこではインディーズでもプロでも同一に一つの楽曲として扱われる。今までのレーベルは力を失って行く。それは音楽に限らず、アップルのApp Store、AmazonのKindleなどの電子書籍でも同じ。新しいテクノロジーが既存の(場)を飲み込みつつ、新しい権力者となっている。


そして本書の重要なキーワードとなるのが「レイヤー」という言葉です。
例えば、音楽業界はそれぞれがショートケーキのように層を成していた。それが今では、一つ一つの層を輪切りにスライスしたように、別々で動いている。例えば、音楽業界であれば、ミージシャン、ディレクター、スタジオ、今までは同一だったものが別個で動いている。今の時代はそれぞれの層を組み合わせるサンドイッチのような感じなっているそうだ。大事なのは中身ではなく、土台となパンだったりする。それを現代ではアップルのiTunesなどが担っている。新しい時代の支配者です。
どのレコード会社のつくった楽曲なのか、どの放送局のつくった番組なのかという縦の切り分けは、この(場)の世界では意味を持ちません。どんな楽曲だろうが、どんな番組だろうが、全部ガラガラポンととこのなかに運び込まれて、それがさまざまなレイヤーを経由して、皆さんのもとに運ばれる。そういうふうに変わるんです。
(場)によって、ありとあらゆる常識は逆転していく。ネットはその技術進歩以上に、私たちの生活を大きく変えつつある。つまり、(個)としての影響力が強くなっているのだ。佐々木氏は本書の終わりを「レイヤーでつながろう。(場)と共犯し、(場)を利用し、(場)に利用されよう。そして、(場)を流れていこう。大地の上を動き続けよう」と締めくくっている。Amazonなどのレビューでは「歴史の本かっ!」という指摘もあるようだけど、あれだけ丁寧に歴史を振り返ってこそ、レイヤーの意味が分かるのだと思います。