クレヨンしんちゃんの名作を何にするか?という議論は尽きません。多数決を取れば「オトナ帝国」か「戦国大合戦」のどちらかが名作だという方も多いでしょう。(ちなみに、ボクはヘンダーランドがクレしん劇場版ベスト1位だと思ってます)確かに、オトナ帝国も戦国大合戦も名作ですが、クレヨンしんちゃんというフォーマットで考えた場合、別作品なのではないか?と思うわけですね。例えば、バットマンで言うダークナイト的な?戦国大合戦の一つ後「栄光のヤキニクロード」で、かなりギャグ路線に戻しましたけど、あれはあれでクレしんらしくない。で、ボクは一番バランスが取れててクレしん的な映画としては本作「電撃!ブタのヒヅメ大作戦」がおすすめだと思ってます。

●あらすじ。

秘密組織SMLのメンバー(コードネームお色気)はブタのヒズメからコンピューターウィルスの入ったディスクを盗み出した。時を同じくとして、懸賞で当たった屋形船ツアーに参加していたふたば幼稚園の面々。そこに突然、現れたコードネームお色気。ウィルスを取り戻すためにやってきたブタのヒズメによって、おいろけと、しんのすけたちは敵に捉えられてしまう。ウィルスで世界征服をたくらむブタのヒズメの企みを阻止するために、戦いが始まる、、。

●感想。

冒頭は007を思わせるほどシリアスな展開で作品にぎゅっと引き込まれます。と思いきや場面は展開し、屋形船で食事を楽しむ「ふたば幼稚園」の面々。一気にほんわかモード突入か?と思わせておいて、ブタのヒズメの飛行船がやって来て、飛行船でしんのすけ達を拉致。そして、ここから物語が一気にシリアス方向へ。と思いきや、SMLの筋肉と名乗る男が野原家にやってくる。曰く、しんのすけの写真を手に入れるためだった。ここからが凄くて、みさえがお茶に下剤を入れるわけです。トレイに行きたい筋肉、自分たちを連れていく契約書にサインしなければトレイに入れないという、ひろしとみさえ。ここのシーンがめっちゃくだらない。そこを劇画タッチで描く面白さ。そして、トイレに入った後のひまわりやチューリップがばーん、これは凄いです。

本作はオトナ帝国の原恵一さんが監督した作品。あまりメジャーな作品ではありませんが、シリアスとギャグのバランスが絶妙な名作です。敵も見方も要所要所でギャグが入る。厚底ブーツをいじられる敵の幹部。そして、ウィルスを発明した教授とその弟子。この2人がめっちゃ適当。クレしんの劇場版でその当時の流行を取り入れるのが好例ですが、登場するIZAMU(シャズナ)なんて、今のちびっ子からしたWikipediaで検索しないと分からないレベルです。本作に登場するコードネームお色気ですが、当時、流行っていた「新世紀エヴァンゲリオン」を原恵一監督が気にっていた。声優にミサト役の三石琴乃さんを起用して、しのんすけの事を「シンちゃん」と呼ばせていた事もそれに由来するそうです。

で、本作の一番の魅力はやっぱり、ぶりぶりざえもんなわけです。このコンピューターウィルスって言うのが、しんのすけが考案したぶりぶりざえもん。ライムターの宇多丸さんがしんちゃん成長しちゃう問題って言ってますが、あれが本作では一つの感動的シーンに繋がるわけです。一筋の涙、でも表情は見せない。そして少しオトナになるしんのすけ。あっしんちゃん成長しちゃう!感動的なラストが待ってます。さようなら、ぶりぶりざえもん。

オトナ帝国と戦国大合戦しか見てないという方は、是非、おすすめです。