最初に感想を言えば、「まぁそうだよね」という事です。巷には、元リクルート出身で例えば、元和田中校長の藤原さんであったり、企業経営者というのが数多くいる。それは外資のマッキンゼーか和製のリクルートか、というほど有望な人材を育てて輩出している。本書ではそれを「幻想」という言葉を使って表現しているけれど、別にリクルート出身が特別では無いという大胆な論調で綴ります。冒頭で語れているように、今の若者はリクルート事件も1兆円の負債があってダイエーの傘下に入っていた時期がある事も知らないわけです。今でこそ無借金、そして売り上げ1兆円を越える大企業に育った。近々の上場も期待され、今や就職先として人気企業に上り詰めた。で、本書の主題は「リクルートが人材輩出の宝庫とは本当か?」という事です。

でもボクが率直に本書を読んで思った事は冒頭に書いた「まぁそうだよね」という事です。極論を言えば、リクルートに独自の人材輩出プログラムはないけれど、高給であって暗黙の了解としてある程度の年齢になったら独立するという雰囲気がある。つまり、リクルートが特出している所は循環だと思いました。俺のフレンチみたいなものですね。本書では「輩出」ではなく、「流失」という言葉を使っている所が面白いです。

最近のリクルートについても触れられていますが、最近リクルートは革新的な新規事業は行われていなくて、買収によって規模を拡大しているという指摘。そして本書で一番面白かった部分は後半の「リクナビが就活生を不幸にした」という項目。確かに、一括エントリーによって1人で膨大な数の会社を受験する事できる。しかし、それが逆に学生と企業のマッチングを削いでいるという指摘です。リクルートの幻想、人材輩出企業でもないし、営業力の強い会社でもない。近頃の規模拡大は積極的なM&Aの恩恵であって、もしかすると社長の経営センスが優れていたという事なのかもしれません。

でも、就職先として高給である事は間違いなく、今日明日に潰れる事は、ほぼないので、就職先としてはおすすめかもしれません。