当たり外れの多いアスキー新書の中で、久々のヒットです。これはマケーティングに関わっているなら一読の価値ありです。最近の広告事情と言うと、やれTwitter、やれFacebookといった流行に乗っておけというモノが多いです。勿論ですが、TwitterやFacebook、最近ではLINEを使ったからといって満足できるリターンが帰ってくる保証は無い。マス以上にマイナスの結果を突きつけられる事になる。米ギャラップ社が調査したアンケート結果によれば、
2004年のギャラップ国際経済フォーラムの研究によれば、対象になった世界47カ国で、グローバル企業や国内の大企業に対する信用が急激に低下しているという。グローバル企業や国内の大企業は、「社会の利益のために機能している」とは思われていないのだ。3万6000人の回答のうち、グローバル企業を「ほとんど信用していない」か「まったく信用していない」と回答した人の割合は48%、また国内の大企業に対して同様の回答を寄せた人の割合は52%で、これは組織に対する不信感のなかで最も高かった。2003年の調査では、アメリカ人の3分の2が、「企業は、発覚の恐れがなければ顧客を不当に扱うだろう」と回答した。
これか2004年の調査。Facebookが爆発的に普及する前であり、日本ではLINEのサービスすら始まっていない。この調査の面白い点は信用しない割合が高い事以上に、大企業が莫大な広告費をマスに投下している事です。何億、何十億、時には数千億という広告費を投下しても信用が得られないのです。で、本書の主題は既に影響力を失いつつある、マスから少し離れて顧客とキズナを作る。そのために、FacebookやTwitterといったソーシャルメディアを活用しましょうという事です。

●きずなのまーけてぃんぐ。

ただ、本書でも綴られている事ですが、一長一短に絆が消費者と結べるわけでは当然のような無い。ただ、これがネットの不思議な所ですが、完璧なクオリティのモノをネットにアップしたからといって宣伝を一切しなければヒットはしないという事です。ソーシャルという点で言えば、人気ゲーム「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)でさえ、それ自体の面白さで爆発的に普及したわけではなく、CMを流した時と比例してユーザー数を獲得していったわけです。YouTubeでHIKAKINが人気の理由も彼のコンテンツが優れているという以上に、YouTubeという爆発的なプラットフォームに依存している割合が大きい。ニコニコ動画と比較すると面白いわけです。

本書を強引に要約すれば、キズナのマーケティングは友達を構築するように、ゆっくり丁寧にそして、真摯な気持ちをもって取り組む事が大切だと言います。ソーシャルメディアマーケティングは「魔法」の杖ではない。その通りです。旧来の時代はオーダーの時代だった。しかし、今はオファーの時代。つまり、顧客の要望にどれだけ答えられるのか?という事が問われているわけです。

●新しいマスの形?

ある意味で本書が面白かった点は、ソーシャルメディアが新しいマーケティングの主戦場だとして、マス広告はマス広告でまた別のアプローチの仕方があるのではないか?と思った点です。つまりは、ソフトバンクの白戸家のように、マスはマスの使い方があって、たぶんマス広告が終わったのではなく、旧来のマス広告は終わったが正しいと思いました。