スタジオジブリの作品やAKB48がヒットする理由は何だろう?単純にコンテンツの質が良いから、それは一般人が言えばまかり通るが、何かしらのコンテンツに関わる仕事をしている人には通用しない部分かもしれない。コンテンツが売れる、そして衰退するには理由がある。本書ではヒットの法則を題材にコンテンツの未来を綴る。





●1.東大合格率よりも低いヒット。



ヒット作品というのは年間を通せば数本はあります。本であれCDであれ映画であれ。しかし、ヒットする作品やコンテンツがある一方で、ヒットに恵まれなかった作品は無数に存在します。例えば、本の例で言えば年間に出版される本のうち、ミリオン(100万部)を突破する本は0.006%しかない。去年で言えばミリオンを記録したのは、阿川佐和子さんの「聞く力」だけだそうです。その多くが1000部〜2000部売れれば良い方だという。それだけだと印税で数十万円ほどしか入ってこない。印税だけで喰える作家は日本に50人もいないそうです。



●2.メガヒットを生み出す3つの流行パターン。



流行には様々な種類がありますが、本書では流行を3つのパターンに分類します。



・群島型パターンA

(成功事例に様々な企業が参加し、メガヒットが生まれると、我先にと群がってくる。)

・列島型パターンB。

(「ワンソースマルチユース」つまり、アニメ発信で玩具や文房具など様々なものに展開していく。)

・新大陸型パターンC。

(アメリカ大陸を発見したように、まったく新しい市場を開拓する。)



その上でヒットの法則には以下のような事が当てはまる。



産業黎明期(パターンC)

これから、どんどん新しい参入者が入ってくる。

産業成長期(パターンA)

市場の2〜5割を数本の大ヒットが席巻し、残りは数百本・数千本という「新しさ」だけを売り物にする新興産業。

完熟期(パターンB)

そのまま終焉を迎える。



黎明期の産業では新しい物を次々に生まれるが、映画や玩具のように成熟した環境では、例えば人気キャラクターや人気コンテンツの派生系の物が生まれてくる。



●3.競合を認め、シリーズ化を試みよう。



例えば、1991年の米大手映画会社のデータがある。それによれば、91年に公開された99本の映画のうち51本が赤字であるという。その上でヒットを続けるためには、ヒット作のシリーズ化が重要であると説く。有名な例でれば「パイレーツ・オブ・カリビアン」であったり「ミッション・イン・ポッシィブル」だったりするわけですが、ヒット作の続編こそ数字の読めるものはない。たた、やはりその中でも模倣者の存在は忘れてはなりません。模倣者がいて、そして新規参入がいてこそ市場は活性化し、パターンで言うA(群島型)が完成するのだと言います。



●4.「ブランド」と「ライセンス」で収益を最大化せよ。



時代はライセンスなのかもしれない。当時、25歳だった青年が持ち込んだ一つの企画が17年間で4兆円を越える売り上げを記録する事を誰が想像しただろう。ヒットする事も勿論大切ですが、コンテンツをライセンス化して管理運営する事の大切さもある。その昔、ビル・ゲイツが6000億円でサンリオを買収しようとした話が紹介されていますが、ヒット最大の利点は「ブランド」であって、ブランド化する事でもう一つの流行パターンが完成する。



●5.人間の「快」パターンを追求せよ。



新大陸(パターンC)において、必ずしも天才がヒットを生み出すとは限らない。ONE PIECEであったりジブリ作品、そしてドラえもんの劇場版においてそうであるように、「快」のパターンが存在する。雲の王国で言う、ドラえもんとののび太たちがいて、異世界(雲の王国)に迷い込みながらも最後は成長する?といったものだろう。ここで大事なのが「プラットフォーム化」だという。ユーザーはある意味でお決まりを好み。つまり、水戸黄門で言う印籠であったりするわけです。



新しい物は独創的というのは少し違うと思った。お決まりのパターンがある中で少しの色を付ける事、その事でコンテンツは新しい市場を開拓できるのです。



●まとめ。



やはりコンテンツが多様化しているという事実はある。90年代に入りメガヒットが連発する一方で、00年代に入って携帯やパソコンといったものが普及する中で学校の井戸端会議ではありませんが、必ずしも「好き」が一緒とは限らない。ただ、コンテンツそのものの作り方が大きく変わったのか?というと、それも違う。ヒットを生み出すのが難しくなる一方で、ヒットを分析するという新たな試みが必要なのかもしれない。AKB48は新しいようで古い、それこそジブリは児童文学か原作である事も多い。



ヒットが変わったのではない!ヒットの法則が変わったのだ!