今現在、本屋さんで購入できるシンガポール本(観光は除く)でベスト2に位置する本です。ちなみに、ベスト1は「物語 シンガポールの歴史」です。シンガポールのイメージというと日本人からすれば、「マーライオン」だったり、船の乗ったホテル(マリーナベイサンズ)などが有名ですが、その一方の世界の競争力ランキングでは常に上位に位置する。1人当たりのGDPで既に日本を追い抜いている。その大きさは東京23区より少し大きい程度。建国から60年あまりで、資源もない人口も少ない中で発展を続けるシンガポール。



その凄さに迫ったのが本書です。



●バカは官僚になるな。小学生のうちに選別されるシンガポールの子供たち。



基本的に日本でもシンガポールでも(日本で言う東大法学部)といった有能な人材が官僚になる事(日本ではその点が批判されているけれども、、)は同じでも、シンガポールは有能な人材が国家を動かす事を国家の最重要課題として取り組んでいます。衝撃的だったのが、小学校を卒業すると受験する学力テスト「PSLE」です。このテストの点数によって人生が決まるといっても過言ではありません。



このテストの結果によって進学できる学校が決まります。日本では中学や高校時代にがむしゃらに暗記をすれば有名高校でも大学でも入学するチャンスがありますが、シンガポールでは小学生までに結果を出せない子供に未来は無いという徹底ぶり。で、このテストの面白い所が暗記タイプではない事。全体の6割〜7割ほどが言語の問題で構成されている点です。世界の企業を誘致する事、そして日本と違って単独民族でないシンガポールにとって、公用語である「英語」の重要性は高いのだと思います。



小泉元首相も引用した「米百俵」の精神。これは明治初期に困窮した長岡藩に対して米百俵が送られたエピソードが引用されています。そのまま食べてもいいのに、長岡藩ではその売却益を使った学校を建設した。人材こそ最重要、良い人材が育てる事が未来の繁栄に繋がる。シンガポールも同じ考え方で歳入のうち21%が教育費として使われています。



●シンガポール建国の父、建設の父。



間違いなく、今のシンガポールがあるのは元首相のリー・クアンユー氏の功績です。でもシンガポールか国として繁栄する原点にはある男の存在がありました。名前は「トーマン・スタンフォード・ラップルズ」と言います。元々は漁師が細々と暮らしていた地域を貿易の拠点にする。ラッフルズがシンガポールに降り立ったのは、1819年1月28日の事です。ラッフルズはイギリスの東インド会社の派遣員としてこの地に降り立ったわけです。当時のシンガポールは貿易の拠点ではなかった。



では何故、シンガポールが貿易の拠点として機能するようになったのか?それは、香辛料の大量生産とイギリスにおける産業革命だったそうです。つまり、大量生産によって貿易での香辛料に魅力が無くなってしまった。その一方てイギリスでブームになったのが「中国茶」だったのです。ヨーロッパから中国に最短で移動するためには、どうしてもシンガポールを経由する必要がある。そこで躍進したのがシンガポールというわけです。



●戦略的な国シンガポール。



シンガポールと日本の大きな違いは何か?簡単に言えば、長期的なビジョンに立つ事がてるきかどうか?という点が大きいです。例えば、世界のハブ空港として君臨する「チャンギ国際空港」。東京23区と同じ面積の国家が年間で5000万人もの利用者そして、180万トンの貨物を取り扱っている。日本でも最近はハブ空港が注目を集めてますが、シンガポールはそれ全てが戦略なわけです。それは生きるための戦略なわけです。決して、何となく作って何となく成功したわけではありません。



これはシンガポール全てに共通する事ですが、全ては生きるための戦略なわけです。「公用語を英語」にするのも「税率を限界まで下げる」のも、優秀な移民を低税率で集めるのも、何も無いから、生きるための戦略なわけです。



日本人に足りないのは危機感でしょう。湯でカエルではありませんが、ぬるま湯に浸かっている間に湯だってしまう。シンガポールは常に危機感を持ち成長していくでしょう。



●最後に一言。



確かに興味深い本ですが、これはシンガポールの政治面であって、例えば、キャピタルゲインが低いとか法人税が低いとか、ビジネス面での項目がもっとあっても良かったかなーって思います。