第一次オイルショック、そして9.11以降の投機マネーが招いた1バレル140ドルを越えるオイルショック。それまで原油は安価て安定的なエネルギーだったものが、状況は一遍した。日本も3.11以降の原発停止による火力発電所で使うLNGや石油の増加によって、貿易黒字を急激に減らしている。さて、日本や欧米諸国が石油の高騰で疲弊している一方で、喜んでいる国がある。それは、サウジアラビアに代表される原油産油地域です。しかも、信じられないほど稼いでいる。その埋蔵量だけで、1京3000兆円というのだから想像もできない。本書は、そんなオイルマネーを中東の産油地域の歴史を紐解きながら解説する。



ただ、正直に言えばオイルマネーで幾ら稼いでいるのか?という部分にはそれほど興味が無い。本書の最大の魅力はオイルマネーという題材を扱いながら、中東の歴史を学べる点です。日本のように選挙で選ばれた政治家が国を動かすのではなく、王様が全ての権限と富を握る。本書で興味深かった点は、イスラム教に関する項目だったりする。イスラムの聖典コーランでは実は商売を推奨している。これは、予言者ムハンマドが40代まで商人だった事に由来するわけですが、その一方で利息の徴収はコーラン禁止されている。我々日本人からは想像もできないけど、コーランに逆らわないようにお金を儲ける。これは興味深かったです。これはイスラム金融と呼ばれていて、それはそれで本が出てますので、探してみてください。



ただ、一番興味深かった点は、あれだけ莫大なオイルマネーが流入する中で、それほど使い道が無い点だ。例えば、明確なビジョンを持って世界を変えたいと思う指導者は現れない。結局は、大きいビルを建てるとか、競走馬を買うとか、人間の考える範囲などただが知れているという事なのでしょう。中東の原油はあと60年〜70年は採掘可能らしい。石油にまつわる歴史と背景、まだまだ原油で稼ぎまっせっ!!