宮崎駿とジブリの両輪を築いて来た高畑勲が14年ぶりに描く新作。製作に6年の歳月と50億円の制作費がかかっているらしい。興行収入は20億円とふるわず、大赤字だったらしい。噂によれば、アニメ界を代表する精鋭が集まってしまったため、エヴァの完結編の製作が遅れている原因だという笑い話もあります。基本的に、ストーリーは原作に忠実に作られてます。本作が見所はストーリーではなく、かぐや姫の微妙な心情描写です。この作品は本当に映画というよりも、芸術作品と捉えた方が正解です。


●あらすじ。

ある時、竹取りの翁は光っている竹を発見する。それを切って見ると、その中には可愛らしい女の子がいた。子供に恵まれなかった老夫婦はその子を育てる事になる。人間の常識に反してすくすくと成長し、周囲の子供からは「竹の子、竹の子」と呼ばれていた。

そして、ある時、翁はこれは天がこの子を姫として育てるために授けたのだと考えるようになる。そして、都にお屋敷を買い、その子を姫として育てる事になる。最初は戸惑ったが、その生活にも次第になれ、彼女は名を「かぐや姫」とする。

その美貌の噂に惹かれた都中から縁談の申し出が耐えない、そこに現れた宮中の男。そして、かぐや姫は彼らに対して、伝説の宝を持ってくれば結婚をしてもいいという。結局、誰一人達成する事はではなかった。

そして、ある時、かぐや姫は翁と育ての母に対して、「私は月から来たの、15日になったら月から迎えが来て帰らなければならないわ」と告げるのだが、、、。

●感想。

基本的にストーリーは皆さんの知っている「かぐや姫」と同じです。ただ、本作が優れている点は、かぐや姫の心情を巧みに演出している点です。元々はかぐや姫は田舎育ちで、ぎしを取ったり、キノコを取ったりして生活する方が好きだった。それが一転して、都での姫扱い。自分の現状に悩む姿が巧みな演出で表現されているわけです。

時に、かぐや姫という名の襲名披露で、田舎者の成金扱いされる翁の姿を見て、だだだっと走り出す縦の動き、だだだっだだだっ、障子をばーんっばーんっ、服がボロボロになろうとも走り続ける。そして生まれ育った懐かしの場所へ。本作の見所はほぼ、かぐや姫の心情描写です。

期待される自分と本来の自分の違い。姫としての葛藤、そしてふるさとへの思い。そういった心の変化の描写が上手い。さすがの高畑勲監督です。

たぶん、映像でかぐや姫の内面に触れたのは本作が初めてじゃないでしょうか?

子供の頃は、かぐや姫が男たちに試練を与えた事。そして、月から迎えが来た事くらいしか聞けなかった。

●余談。

本作はある意味で深いんですよね。簡単な解釈をすれば、強欲や欺瞞に溢れた汚れた世界、それに呆れたかぐや姫が地球を去るような物語にも見える。突然、お金に恵まれた翁を現代人になぞらえて、お金が人を変える怖さみたいな物の比喩なのかもしれない。でもボクは一つ思うのが、かぐや姫っていうのは、やらせ番組ですよね。だって、竹の中にかぐや姫を仕組んだのも、竹の中に金塊を仕込んだのも月面人でしょ?それで地球は汚れてるって言われてもね、、。たぶんね、これはテレビ月面の正月特番ですよ。ロンハーのトライアングルとそう変わりないです。(笑)

本当に最後はシュールに終わります。エヴァ劇場版で月面に放置されたシンジとアスカ、そして最後にアスカが「気持ち悪い」と語るあんな感じの終わり方です。

ただね、映像は一級です。これは物語ではなく芸術作品として捉える事が正解だと思います。

ボクは割と好きですけどねぇ、、。