あのウォーレンバフェット氏が自分の分からない事には投資しない。というポジションを崩してまで多額の投資をしたIBMです。なぜだ?という思いが強かった。その答えは本書の後半に書かれているんのですが、本書はもの凄く面白かったです。日本ではピケティの格差。つまり、rとgの不等式が話題になり、アメリカの企業経営者が多額の給料を貰い、99%対1%。つまり超格差を生んでいるという事が21世紀の資本には語られていて、資本家は労働者よりも稼げる。というのがピケティの主張なわけです。

アメリカでは雇われ経営者が自分の利益を最大限に増やすために、株価を上げて株主に貢献しようとする。消費者の声はどうでもよくて、社員がどうなろうと、会社がどうなろうと関係ない。その最たる例が本書の題材となっている「IBM」なわけですね。

一つ面白い話として、超経営者として知られたGEの「ジャックウェルチ」が1番。もしくは2番にならない事業からは撤退するといったスタンスだったのに対して、会社において株主の利益は結果であって最重要するものではないと語っている点です。

IBMが陥っているものは、アメリカの新自由主義の最たるもので、消費者を無視し、社員を無視する。例えば、昔のフォードがそうであったように、欠陥品を新品と交換したり修理するよりも、裁判で賠償金を払った方が安上がりという方針を取る。事業を次々と賃金の安いインドなどにアウトソースする。その最大のものがパソコン事業のレノボへの買収ですよね。とにかく短期間でもいいから株価が上がればいい。そうすれば、自分の給料は莫大な額になる。

借金をして自社株を1000億ドル近く借金で購入し、株価をつり上げる。通常、自社株買いというのは、自分の会社の株価が下がっている時に行うものであるわけです。簡単に言えば、市場に出回る株が減ればその分だけ1株あたりの単価が高くなるわけですね。

で、ウォーレンバフェット氏が何故自分の分からないIT界の巨人であるIBMに投資したのか?というと、大まかに言えば「IBMが自分にも分かる事業を行っている」という事ですが、狭い意味では参入障壁を作るのが上手いという事だと本書には綴られています。コカコーラやジレットのように、バフエット氏はそういう銘柄を好みます。

そして、本書の結末では低いトーンで「IBMはこうすれば良くなる」といった事が綴られているわけですが、あまりにもその声は細々としていました。日本がアメリカっぽくなる事もいいですが、自由主義の象徴的な例が今のIBMなわけです。ゴーンの10億円の報酬なんて安いもんです。