書店で見かけて驚いた。あの大物声優である大塚明夫さんが声優論を語る。大塚明夫さんと言えば、ボクの中ではメタルギアソリッドのスネークなわけですが、声優界では「山寺宏一」「林原めぐみ」と並ぶ超人気声優です。そんな大御所の声優が書いた本の帯が「声優だけにはになるな」ですから、これは買わない方が不自然でしょう!

率直に感想を言えば、2015年もう100冊以上読んでますけど、確実に今年最高傑作です。勿論、声優向けの本ではあるものの、特に若者にとって夢を追いかける意味と意義と問いかけます。すごいです。もう一回言いますけど、すごいですっ!

●声優になるな。

これがいきなり冒頭で書かれているわけです。
本書で私が皆さんにお伝えしたいことはただ一つ。声優だけはやめておけ。嘘偽りなく、これだけです。
とあるように、たったそれだけ。最近は深夜アニメやアイドル声優の人気もあって、声優を志す若者も多いそうです。でも本書でもはっきりと書かれてますが、「声優養成学校に入って、声優の腕を磨いて将来は人気声優になる」これがそもそもの間違いだと言っています。

これは衝撃的な発言ですが、大塚さん曰く「声優は仕事は作れない」という事です。あ〜なるほど!と思いました。例えば、映画であればスピルバーグがジョーズやジュラシックパークを撮りたいと言えば、企画書を提出してFOXとかワーナーに企画が通れ製作が進む。漫画も同じで、尾田栄一郎先生が「ONE PIECE」を書きたいと思ったらかける。それは鳥山明さんも以下同文です。でも声優に関しては、アニメや映画の吹き替えという仕事があって初めて成立するわけです。自分で需要は作れない。だって、山寺宏一さんのために映画が作られたか?林原めぐみさんのためにアニメが製作されたのか?というと、答えは限りなくNOに近いわけです。

で、深夜アニメが増えたと言っても、声優数に対してアニメの本数は限られているわけです。

象徴的な話として、声優という職業では銀行のローンすら借りられないという実態があるわけです。

●声優になりたい奴はバカである。

これも衝撃的ですよね〜。これは三ツ矢雄二さんも昔テレビで言ってましたが、声優にはランクというものが存在しているそうです。一番下にいるのがジュニアで、三ツ矢雄二さんクラスになると基準は無くて、作品毎の交渉によって決まるそうです。だから、超人気アニメの主役であっても、新人であればそんなに貰えない。本書では以下のように説明してあります。
一番下に位置するのが「ジュニア」。これは新人養成期間で、仕事1本あたり1万5000円の報酬が基本です。3年間の新人期間が過ぎると「ランカー」と呼ばれ、出演作品の尺30分に対して1万5000円のランク15を始点に、1万6000円のランク16、1万7000円のランク17、、というように千円単位で値段を上げて行くことが可能になります。30分アニメ1クールの主役に抜擢されたとして、その声優Aがランク15なら、ギャランティーは1万5000円×12で合計18万円というわけです。

●声優になりたかったら人生を捨てろ。

これも衝撃的な話ですが、声優は「ハイリスクローリターン」の仕事であるという事です。普通に家庭を持って、幸せな生活を送りたいなら声優を選ぶべきではないと、はっきり言っています。声優に向くのは、人生を捨ててもいいという気概を持っている人。一見華やかに見えるのは声優養成学校のイメージであるわけです。「人に勇気や夢を与えたいから声優になりたい」これも嘘っぱちだと大塚さんは言います。夢は与えるものではない、という事ですね。

●この本から学べる人生訓。

本書は声優さん向けの本ですが、ボクが本書から一番役に立った事は、どんな仕事でも命をかけて努力し取り組める事が成功する。という事です。声優の世界も同じで、誰もが声優にという職業に憧れるけれど、本当に死ぬ気で努力するものは少ない。だから、自分が仕事が無くならない、と本書で大塚さんは言いますが、音楽の世界も似たようなものじゃないですか?アーティストのカッコいい一面だけを見て志すけれど、死ぬ気で練習できるのか?と言うと、大半の人は途中で挫折してしまう。本書はある意味で若者に対する激励だと思いました。

若者よ本気で何かに没頭した事があるのか?
お金じゃないものに命を捧げる事できるのか?

という問いかけですよね。

途中の声優さん向けの箇所は割愛しましたが、声優を目指す人は必読です。その上で何か夢を持っている、もしくは持ってない若い方も必読だと思いました。改めていいますけど、これを大御所声優である大塚明夫が言っているのが凄いです。新書ですし、是非手に取る事をおすすめします。買わなきゃ損ですよっ!!