IBMと言えば、最近ではAppleやマイクロソフトの影に隠れる存在ですが、IT業界の巨人である事に変わりはないです。でもIBMは本書の著者であるガースーナーさんが来るまで苦境に喘いでいた。

余剰な人員、そして無駄な組織。硬直化した会社。本書の説明によれば、ゴーストライターを使わず全て自分で書き上げたそうです。

アメリカの天才と言えば、GEのジャックウェルチなわけですが、ウェルチ氏の経営が1番もしくは2番にならない事業は売却せよ。というスタイルだったのに対して、ある意味でガースナー氏の経営は日本的です。

というワケで、いってみましょう。

●感想。

「アメリカの天才経営者と言えば、ジャックウェルチで同意ですか?ボクも最近までそう思ってました。なんで2002年にこの本が出て発売当時に買わなかったんだろうと後悔してます。」

「IBMと言えば、世界を代表するIT界の巨人です。元々サーバーやパソコンといった物の先駆けを作った会社であって、スタンリーキューブリックの2001年宇宙の旅に登場するコンピューターであるHALも一文字ずつずらすとIBMになります。」

「余談ですが、任天堂の子会社であるHAL研究所。スマブラとかを開発している会社ですが、そこもIBMよりも一歩先へ。というのが由来だそうです。」

「で、ガースナー氏の経営手腕はどこか日本的なんですよね。本書を全てを通しても奇想天外で大胆な行動は取りません。問題があるのは製品であって社員である。本書の大部分が組織はどうあるべきか?という事を問いかけるわけです。」

「当時のCFOと呼ばれる役職が200名近くいたそうで、そういった組織を再編したわけです。」

「実行こそが、成功に導く戦略のなかで決定的な部分なのだ。やりとげること、正しくやりとげること、競争相手よりもうまくやりとげることが、将来の新しいビジョンを夢想するより、はるかに重要である(※本書より引用)」

「最近になってあの著名投資家であるウォーレンバフェット氏が(自分の知らない領域には投資しない)というポリシーを破ってIBMに投資した事で話題になりました。話によれば、IBMのビジネスモデルがシンプルになったという事が理由だそうです。」

「とにかく企業にとって大切な事は商品を愛し、社員を愛する事。」

「コストをカットしてファブレス化して短期的に利益を上げる事は簡単だけど、ガースナー氏はそうしなかった。本書を読むと人そこが会社にとって最大の利益の源泉である事が分かります。」

「ただ、最近になって出た(倒れゆく巨象――IBMはなぜ凋落したのか )を読むと、ガースナー氏のイズムは継承されず、自社株買いを行って株価をつり上げ雇われ社長が利益を得るためだけに行動している、、という事が綴られてます。」

「最後にちらっと書いてありますが、ガースナー氏は割と短期的なストックオプションには否定的なんですよね。長期的に会社を繁栄させるために、政府は株の売買に関して短期の税率は高く。長期の売買は税金を安くと主張してます。後半では会社の社会貢献についても語られています。」

「久々に、あっこういう優れた経営者もいるんだな。と同時に、尊敬できる人です。」

「長いですが、これは読んでおいて損はないです。」