オールイタリアロケ。フジテレビ開局50周年を記念して製作された映画「アマルフィ」。これが日本がハリウッドに対抗できる映画だっ!と宣伝していた記憶があるけれど、良くも悪くもテレビサイズのちょい豪華な感じの作品。

ライムスターの宇多丸さんは酷評していたけれど、Yahoo映画での評価が意外にも高くて驚きました。たぶん、これは映画作品として見るかテレビドラマの延長として見るかによって評価は変わるでしょう。映画としては、はっきり言って駄作ですけど、、。

●あらすじ。

外交官である黒田は赴任先のイタリアに到着した。予定されているG8の外務省会議の開催に急がしい日本大使館。そんな折、子供が美術館で迷子になったという知らせが大使館に届く。ひょんな事から一緒に同行する事になった。そしてそこで起こる誘拐事件。そして、日本大使館を巻き込む政治と正義。子供の行方、そして隠された謎とは、、、。

●感想。

「まず本作の問題点としては挙げられるのは、脚本に誰の名前もクレジットされてないという事。あ意味で脚本には誰も責任を取りませんよというフジテレビの意思表明だと捉えました。」

「物語の冒頭でのホテルでくつろぐ、織田と天海のシーン。そこで意味ありげにズームアップされるブローチの不自然さ。そして不意に映される(アマルフィ)のタイトルロゴ。もうこの時点でおや?という不穏な空気が流れるわけです。」

「で、物語の冒頭は実は少し先の話だという展開。」

「織田を迎えに行く戸田恵梨香の不自然な演技。そして車内での(アパートはここから、車は好きなものを。)という伏線の無い無駄な会話。何となくの外交官の設定作り。」

「正直に言って本作で戸田恵梨香も大使館で働く大塚寧々そして伊藤淳史も存在理由が分からない。別にそれはエキストラで対応すれば良い話ですし、あえて金を払うほどの役柄でもない。戸田のジェラートの話なんてどうでもいい。」

「本当にハリウッドを意識するであれば、織田以外はオーディションをして新人を選ぶべきだった。」

「本作で誘拐された娘の母親を演じる天海も、離婚弁護士等でのキャリアウーマン的なイメージを考えると、ニッポンハムと東芝の宣伝くらいの違和感がある。」

「子供は子供で誘拐される。身代金を要求されるわけだけど、子供に同情できない。本編中では実は目に病気があって手術を控えているというお涙頂戴的な説明で後付けの同情を迫るわけだけど、もうこういうのは時代遅れ。」

「ハリウッドによくある。仲間が誘拐されて味方が助けに行く。ある意味でダイハード的な展開を期待するけれど、そもそも論としてこの物語はイタリアである必要があったのか?浅草でもお台場でも良かったのではないか?」

「確かに、山本英夫氏が撮影したイタリアの風景は見事であるものの、脚本が適当すぎる。」

「最後に実は誘拐犯は、、という展開があるけれど、映画で例えるならSP劇場版くらい無理がある設定です。」

「犯人の要求通りに観光地を転々とさせられる織田と天海。これは制作者側の(イタリアで撮ってるんですよ〜すごいでしょ!)というアピール以外の何ものでもない。」

「特別出演で登場する福山雅治も女性顧客を獲得するための宣伝要素的な感が拭えない。」

「織田は織田でまぁ踊るとは違ったポーカーフェイスな雰囲気を出しているのは良かった。」

「ただ脚本、構成、そして事件展開。全てにおいて2流の完成度。最後の佐藤浩市の緊迫したシーン、なぜこれを日本大使館内で行ったのかは謎。これだったらブルーバックで風景を合成して湾岸スタジオで撮影すれば良かった。」

「日本映画の悪癖として社会風刺、政治風刺的な事を行いたいんだけどステレオタイプ的な悪い政治家のイメージにしかならず、政治に対する勉強不足が露骨に出ている。」

「海外で言えば24なんか、政治とテロという側面で(本当に起こるんじゃないか?)という緊迫した演出と脚本が視聴者を魅了する。」

「TSUTAYAで24を普通に借りられる現在、日本のこういった20世紀型のドラマの虚像は見てみて腹立たしい。」

「結局最後は何となく伏線を残して、おそらくのドラマに誘導してしまう。映画として完結してない。いったいこの作品か意味するものは何なのか?そういったメッセージ性はなかった。」

ドラマの延長としてTSUTAYAで100円で借りるなら面白いけれど、劇場で1800円出すにはあまりにも適当です。これがフジテレビの限界だったら日本の映画は終わってます。