個人的に人生で一番泣いた映画を挙げるとすれば、真っ先に上がるのが「帰ってきたドラえもん」です。あのジャイアンとのび太が喧嘩をして(君に勝たないとドラえもんが安心して未来に帰れないじゃ無いか)という名シーン。あそこで涙腺崩壊です。ジャイアンに夢遊病の気がある事は伏せておきますが、本作「バースデーカード」はドラえもん並みに泣ける感動作品です。

小さい頃に病気で死んだ母親(宮崎あおい)から誕生日のたびに届くバースデーカードを巡る暖かくも感動的な物語です。宮崎あおい主演と言えば、個人的に名作だと思っているのが(ソラニン)です。あのラストで歌うたアジカンのヘタウマな歌は素敵です。あの当時、若手と言うか新社会人という位置付け、たぶん20歳前半くらいだったと思いますが、あれから10年以上の時を経て母親役を演じるというのが、個人的には年を重ねたんだなぁ〜と思います。


●あらすじ。


主人公の鈴木紀子は、ちょっと抜けているが憎めない父親の宗一郎と弟の正男、優しくユーモアを忘れない母親の芳恵に囲まれ、ごく普通の家庭で幸せな日々を過ごしていた。
しかし、母親は、紀子が10歳の時に病気で他界してしまう。いつも紀子を励ましてくれた母、このままずっと隣にいてくれると当たり前のように思っていたが・・・。
母と過ごした最後の年の10歳の誕生日、母は、20歳を迎えるまで、毎年手紙を送ることを約束した。
翌年から、本当に手紙が届き、それは、時にクイズだったり、ファーストキスの仕方だったりとユーモアを交えた人生指南だった。
そして、最後の手紙、20歳のバースデーカードには 死を覚悟した母親のささやかな生への希望が綴られて。。。

●感想。


内気な性格で友達も少なかった主人公の紀子に母親である宮崎あおいが語りかける(あなたはあなたの人生の主役なんだよ)という言葉。そこで紀子はこう問いかけます。(ママの人生は幸せだったと言える?)明るく優しい母親もその言葉には即答で返事をする事ができなかった。そして、母親は難病を患い入院する事になる。そこでも明るく振る舞うけれど、本当はもっと長く生きたい、もっと子供たちと暮らしたい。父親である宗一郎(ユースケサンタマリア)に感情をぶつけてしまう。紀子が帰った後で20年後の紀子の姿を想像しながら書く手紙。でも人間は完璧な生き物じゃない。わからない、わからない。20年後の紀子の姿を想像する事ができない。毎年、誕生日の日に届く母からのバースデーカード。ある年には恋人を作る事。ある時には、自分の過去を振り返る旅に出る事。大人になるにつれ、その手紙が重みに変わっていく。でも、開いた手紙には母親の本音が語られていた事に紀子は強く感情を揺さぶられた。自分の前では完璧だった母親がこれほどまでに弱い存在だったとは・・。

そして、物語は入院中のある出来事をきっかけに展開していく。テレビに映し出されたアタック25の映像。母はクイズが得意だった。紀子と交わした約束(ママも出場すればいいのに・・)その時に書かれた、決して投函される事の無い手紙。そして20年後、紀子は母との約束を果たす事になる。

特別に派手なシーンがあるわけではないけれど、物凄く暖かい物語です。特に、20歳を迎えた母からの最後の手紙。でも本当は最後じゃなかった。最後で明かされる真実、そして母親という存在がこの世にはなかったとしても、ずっと自分を支えてくれていた事に気づく。最後に渡された手紙。それには何と書かれていたのだろう。病院で紀子にだまって作っていた未来へのプレゼント。

この宮崎あおい演じる母親がめっちゃ素敵な人なんです。ユースケサンタマリアの父親役も素晴らしかった。踊る大捜査線の署長役の時の悪い方のユースケではなく、父親役としてのユースケの熱演。親が死ぬ事は確かに不幸ではあるものの、親は子供の事を一番に考えている。それと同時に子供も親の事を考えている。物凄く暖かく、決して不幸な物語ではない。ひまわりのように絶えず太陽の方を向いている暖かいストーリーでした。気になる方は是非っ!

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