まさに、武士の家計簿に相応しい映画だった。原作が新書である「武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新」が元になってるいが、本書をちらっと立ち読みした限りでは新書の方が家計簿の方に重点が置かれている。対して、映画の方は「人間」ヒューマンの方に重点が置かれている。同じ系譜を辿っても中身は別物かもけしれない。武士の家計簿(初回限定生産2枚組) [DVD]posted with amazlet at 12.01.27松竹 (2011-06-08)
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幕末から明治。激動の時代を智恵と愛で生き抜いたある家族がいた-個人的な期待としては、そろばん侍がそろばんを使って幕府を倒す!みたいなハリウッド的な映画を期待していたが、まるっきり期待を裏切られた。それも良い意味で。一見地味な御算用者であるが古き良き時代の家族が投影されている。
代々加賀藩の御算用者(経理係)である下級武士の猪山直之(堺雅人)は、稼業のそろばんの腕を磨き出世する。しかし、親戚つき合い,養育費、冠婚葬祭と、武士の慣習で出世のたびに出費が増え、いつしか家計は火の車。一家の窮地に直之は、”家計立て直し”を宣言。家財を売り払い、妻のお駒に支えられつつ、家族一丸となって倹約生活を実行していく。見栄や世間体を捨てても直之が守りたかったもの、そしてわが子に伝えようとした思いとは-。世間体や時流に惑わされることなく、つつましくも堅実に生きた猪山三世代にわたる親子の絆と家族愛を描いた物語。
猪山直之は親の跡を次いで御算用者になる。お見合い結婚で猪山駒(仲間由紀恵)と結ばれる。やがて子どもが産まれ、子どもも跡を次いで会計係として働くことになる。時は江戸時代から幕末にかけての物語である。本作の一番の見所は猪山が資金難に陥るシーンだろう。家のあらゆるものを売却し、何とか借金を返そうとするシーン。そこが一番のピークポイントです。しかし、本作の魅力はそこではない。個人的には家族団らんの食事風景がこの作品の見所だろう。最初は親と息子→妻と夫→夫婦と子ども。おばぁちゃんが死に、父親が死ぬ。1人が死ぬ、また新しい命が誕生する。食事風景に込められた思いを汲み取ってほしい。
僕がこの作品で好きなのは鯛のシーンだ。子どもの祝いに鯛を出せないと知った母が紙に鯛の絵を描いて渡す場面。好きだなー、一家団らんのピークがそこにある。後半は辛い。人が生き、人が死ぬとはこういう事だろう。という事が表現されている。川で拾った小銭を夜も遅い時間に返すように命じる厳格は父親。全世代が共感できる作品だろう。作品としてのワイルドさには負けるが、こういう映画があってもいいと思った。
家族で観て感想を言い合うにはぴったりの作品だと思います。
■ひと言映画評
時代劇版の「ALWAYS 三丁目の夕日」だね。これは…。