明日の広告ほどのインパクトはないものの、誠実にソーシャルメディア。つまり、TwitterやFacebookといった新しいツールの登場によるコミニュケーションの変化を解説してある。「ソーシャルメディアは、「関与したかったけどいままで関与する手段を持たなかった人たち」や「深く関与したいわけではないけどちょっとだけ関与したい人たち」をも結びつけ、彼らが動くプラットフォームとして機能したのである」新書の妙だろう。とても読みやすく、新しい時代の開会宣言をされているようだ。人と人と人と人、それが新しいキーワードだろう。明日のコミュニケーション 「関与する生活者」に愛される方法 (アスキー新書)posted with amazlet at 12.02.12佐藤尚之
アスキー・メディアワークス
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前書「明日の広告」が出版された時は衝撃を受けた思い出がある。今まで広告といえば、一方的に流されるものだった。それこそ、マスによるCMの広告が象徴的だろう。人をF1(女性20歳〜34歳層)やM1(男性20歳〜34歳層)という区切りで分けていた広告業界。茶の間というのは家族のコミニュケーションの代表的だった時代。最近でいう映画の「ALWAYS 三丁目の夕日」の世界なのかもしれない。「明日の広告」で印象的だったのが「ネオ茶の間」の存在だろう。携帯やパソコン片手にテレビなどを見る層の登場。一方的な広告ではなく友人の口コミを通した情報が信頼される。本書「明日のコミニュケーション」ではさらに一歩進化している。TwitterやFacebookのが登場したのはここ数年の話。日本での利用者は全人口の2割程度しかいない。しかし、2割の層を中心にハイパー口コミというものが起こるという事。
友達の友達は友達的な理論ではないが、数人のRT(リツーイ)やいいね!ボタンを通して情報は一瞬のうちに浸透するようになった。水に石を落としたような波紋が連続的、爆発的に発生する。それがソーシャルメディアの凄さだ。僕自身、Twitterを始めて4年弱。Facebookはあまり使っていないが、とりあえずアカウントは持っている。「情報そのものが信用されなくなった」本書で語られているように、今や情報は過剰の時代だ。ここ10数年で人が処理できる情報は変わらないものの、情報量というのは数百倍も多くなった。そして、人は信用できる情報元以外からの情報を遮断するようになった。
人々は「自分のことをよく知っている友人・知人から、情報やオススメ商品を教えてもらうのがいかに便利で有益か」に気づき、「友人とのつながりという古くからある関連性こそ幸せへの鍵」ということを理解した。ソーシャルメディアにおける通貨は「共感」だ。知っている人からの口コミ、そして共感を得る事で、その人がTwitterやFacebookを介して情報を広めてくれる。テレビ番組を録画してCMを飛ばして見ている方も多いだろう。そもそもテレビ自体、Twitterユーザーのオススメ以外は見ないよ、という人も増えていると思う。
もはや消費者をF1やM1といった大まかな区切りでは分けられなくなったと思う。
TVをリアルタイムで視聴しながらTwitterにつぶやく人が増えた。リアルタイム「ネオ茶の間」というのか。しかし、ソーシャルメディアが普及したからといってテレビ番組が終焉するわけではない。先の、「家政婦のミタ」のように、視聴率40%も不可能ではない。これは先に紹介したハイパー口コミの影響、共感の連鎖なのかもしれない。
従来の広告モデルとして、AIDMAやAISASといったものがある。さとなおさんは新しく、「SIPS」というモデルを提唱している。これは興味深い点だ。
S(Sympathy:共感)著者であるさとなおさんは、広告について最後にこう締めくくっている。
I(Interest:興味)
P(Participation:参加)
S(Share:共有)
ソーシャルメディアが普及してきて、またぞろ「広告はなくなる」という論が出てきている。■ひと言書評。
いや、広告はなくならない。
ただ、広告という「枠」がなくなるだけだ。広告はもう宣伝担当や広告担当が扱うだけのものではない、領域感のない何か」になっていくだろう。
ハイパー戦隊、口コミジャー参上!