(※この本は原発事故の当事者や被災3県の住民は読まない方がいいと思った。関東に住む僕でさえ、この本が伝える現実は辛かった。)さすが、Amazonのレビューが100件を超えてるだけある。とても良い本だった本当の意味で刺激的な本だ。3.11を発端とする原発事故。それから1年と少しが経とうとしているが、まだ原発事故は終わっていなかったんだと改めて考えされられた。いゃ100年後、1000年後、100万年後まで続く核のゴミ問題はいっこうに解決していない。原発事故は震災なのか、人災なのか。個人的な感想では「人災」なのだろう。ゴテゴテに回った政府の対応。既得権益を守るためにデータを隠蔽した東京電力。
この事故はおこるべくして起きたのか…。
何千人という人が故郷を捨てて非難生活をしている。戻れる日は来るのか、本書によければ、二度と戻れないというのが正解らしい。浪江町にあった日本テレビの人気番組「鉄腕DASH!」の人気企画「DASH村」の復活も実現するのは難しいのかもしれない。本書で一番衝撃だったのが、東海村JCO臨界事故の被爆者だ。たった1000分の1度体温を上げる放射能の存在。それが人間のDNAを破壊し、死へと導いていく。JOCの事故で大量被曝をした方は事故当初は看護婦さんとおしゃべりができるほど元気だったらしい。その後は皮膚が炎症を起こし、体中に激痛が走る。大量の鎮痛剤と痛みに耐えながら約80日間という戦いが、死を持って終わりを遂げた。
日本に原発は必要なのだろうか。3.11後、東京電力館内で計画停電が実施された。さも、原発停止の影響のように思えるが、実際は震災で被害を受けた「火力発電所」の電力部不足が原点らしい。原発は電力という点においては必要ない。別の言い方をすれば、火力と水力によって日本の電力は補われている。夏場のピーク時の昼間の数時間においてもそうだ。原子力発電は常に100%で稼動しなければならない。そのために、不用な電力を使用する「揚水式発電所」で電気を捨てているのが現実だ。
我々は原発事故が起こるまで原発に無頓着だった。電力についても同じだ。福島に原子力発電所がある事自体、知らなかった人が大半だろう。何故、関東ではなく遠く離れた福島で原発を稼動するのか。それは、当事者である東京電力が原発は危険という認識を持っていたからだ。
原発は二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーだと思われていた。それでいて低コスト。しかし、ウラン精製にかかるコストやそれで発生する二酸化炭素。莫大な設備投資。計算すると全然、低コストでない事が明らかになってきた。
今、クリーンエネルギーに注目が集まっている。
ソフトバンクの孫社長が舵をきったり、自然エネルギー買取法案などが審議されている。コスト低減で爆発的な普及も夢ではない。今、我々に必要なのは身近にある電気というものをもっと知る事だろう。あまりにも無頓着すぎた。平和ボケしすぎたのである。自然エネルギー普及。そのためにはリーダーシップのとれるトップというのが不可欠だろう。今の日本にそのような人材はいるだろうか?大阪の橋本市長か…。
普通、この手の本と言うと最後に楽観的な言葉を述べて終わる。
「自然エネルギー100%は可能です。」といった文句だ。しかし、この本は最後まで現実を的確に表現している。原発に未来はない、核のゴミと100万年戦わなければならない。今、日本人に必要なのは電気についての知識武装だ。そんな文句で本書は閉じられている。本当にそうだと思う。今日、明日、自然エネルギーが100%になるわけでも、明日、核のゴミが0になるわけではない。未来の子孫に何が残せるのか。それは、今後の我々に掛かっているのかもしれない。
■ひと言書評
知識を手に入れよう、まずはそこからスタートだ。