政治家の殺し方
政治家の殺し方
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中田 宏
幻冬舎
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元横浜市長の中田宏氏が書いた本。横浜市長を2期8年勤めた。中田氏に対しては評価が賛否利用論だろう。良いと思う人もいれば、横暴で最悪だったという人もいる。悪いと思う人の大半が感じているのが週刊誌によるスキャンダルだろう。「看護学生と称する女性への強制わいせつ疑惑」「横浜市の公金横領疑惑」「市長公務の放棄疑惑」本書ではその点にとって真っ向なら対立軸を置く。全面勝訴!後になっては過去の話だ。本書で語られている事も大半が「マスコミが悪い」=マスコミは腐っているという言論だ。中田宏を殺したのはマスコミなのだろう?

中田前市長の功績言えば、横浜市の赤字返済や横浜G30に代表されるゴミ焼却場の削減など、今でこそ改革派の代表と言えば大阪の橋本市長だが、全国の行政の長として先端を走っていた人物である事は間違いない。確かに、中田宏を殺したのはマスコミかもしれない。ろくな調査も行わずに掲載を決定した週刊誌。それに便乗する対立派の議員たち。中田氏はマネー・ロンダリングならぬ「情報ロンダリング」と呼んでいるが、僕がこの本を読んで思った事の一つが「中田前市長はマスコミに殺されたのではなく」「マスコミによって死んだのだ」という事だと思った。微妙なニュアンスの違いだけど、この本では随所に「俺は頑張ったんだ、成果も出したんだ」という思いを汲み取ってしまう。しかし、政治家で公に顔をさらして仕事をしている以上、抵抗勢力の反発はあるだろう。それを跳ね除ける力があってこその政治家なのではないだうろか?

同じ政治家でも、大阪の橋本市長とは対極にいるのかもしれない。
一時期、話題になった大阪の橋本市長が自分の父親がヤクザだったという週刊誌の掲載について演説で「父親がヤクザで何が悪い!」と言い放っていた。これくらいできなきゃ政治家じゃないと思う。この本の目的は政策とか国家というよりも、中田宏という人物のクリーン化が目的だろう。その点においては満点が付けられると思う。疑惑に全面勝訴。円満な家庭生活。慎ましい生活。政治家としての理想が描かれている。

本書はタイトル通りに「政治家の殺し方」について書かれている。
マスコミがいかに腐っているのか、メディアの裏側を当事者が語っている点は興味深い。そして、公務員がいかに腐っているのか書かれている。魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈するアブナイ世界という内容で、公務員の実態にも触れている。「おまえはバカだ」「あまえみたいな野郎はとっとと消えろ」「バカ市長、調子にのるな」これは実際に中田前市長が職員から受けたメールの内容だそうだ。特殊手当てという名の第2の給料。職員を解雇できない制度。確かに、日本の国家や行政は腐っている。しかし、行政の長がこんな事を書くのは少し違うような気もする。条例を改正する事も人事権も市長にはあったはずだ。それをいかに職員が悪い、制度が悪いと書かれても読者としては困惑してしまう。確かに、中田前市長は評価される存在なのかもしれない。でも、もっとできたのではないか?それが、本書に65点を付けた理由だ。そして、現代の政治についての提案、大阪維新の会の「船中八策」のようなものが提示されていればよかったと思う。

でも、読み物としては興味深いし1000円は割り安だ。