ツタヤにレンタル2日目にして、既に全てレンタル中だった。ジブリファンの間では賛否両論の感想(レビュー)があるが、僕はこの作品は悪い作品じゃないと思った。初監督作品「ゲド戦記」から5年。今作で2回目となる監督作品。もう少し寛容に見ても良かったのではないか。
時は1963年の横浜。船が遭難し父親を亡くした父と、カメラマンとしてアメリカに渡米した母親を持つ16歳の松崎海(声=長澤なさみ)は実家である下宿宿を切り盛りしていた。毎日、高台にある家から港を通る船に向けて旗を上げるのが日課となっていた。そんな彼女が通う港南学園では、新聞部部長の風間俊と生徒会長の水沼が起こす騒動によって、生徒と教師が対立していた。その中心人物である風間俊(声=岡田准一)とひょうな事から出会う。次第に惹かれあってゆく海と俊。実は、2人には隠された過去があった。
元々は少女漫雑誌「なかよし」に掲載されていた漫画を父親である宮崎駿氏が気に入り企画・脚本を担当している。前作の「借り暮らしのアリエッティ」もそうだったが、企画・脚本「宮崎駿」というのが最近のお決まりらしい。製作総指揮スティーブン・スピルバーグみたいなものか。ゲド戦記でファンから酷評された宮崎吾郎が2作目で見せる本気を感じ取りたかった。ただ、本作のレビューの前に一つ言っておきたいのは、全てを宮崎吾郎が手がけたわけではないという点だ。「企画・脚本・監督=宮崎吾郎」だったら酷評されてもいい。しかしたった2作目で作品自体を否定する事は失礼だと思う。確かに本作において1964年という自分が生まれているか生まれていない分からない年代の横浜を描けと言われたら困るし大変だったと思う。NHKのドキュメンタリーでは奥歯2本を抜いて作業にあたる姿が描かれていた。生みの苦しみってやつだ。親父の影がどこかに隠れているんだから。それだけ熱いジブリファンいるっていう裏返しなのかもしれないけど、ただ本作を観ていて思った事は「親父そっくりだな」という事だ。親父が熱心に指導したわけでもないが、一つ一つの表情や動きが宮崎駿なんだよね。別の意味では劣化版「宮崎駿」っていうんだろうけどね。
本作は基本的に子ども向けの娯楽作品ではない。本作ではマイルドに扱われているが、宮崎駿の脚本ではもっと政治色の強い作品だったらしい。BD版も出ているし、お酒片手に年配の方が見るにはぴったりな作品だと思う。今の高校生って少年ジャンプとかワンピースとかゲームで頭がいっぱいだし、政治色の強い高校生なんて殆どいないでしよ。小学生や幼稚園生には理解ではないかな。作品的な部分に触れるなら、冒頭に出てくる「ハムエッグ」が美味しそうじゃない!ここは作品において致命的だ。熱心なジブリファンならここで観るのをやめたかもしれない。ラピュタにおけるトースト+目玉焼きの通所ラピュタパン、崖の上のポニョのハムラーメンのように、ジブリ作品において愛情や感情を示す一つの方法として「食」というのもを重視している。俊がお肉屋さんで2つ買って、海と分け合ったコロッケ。これがまたただのコロッケでしかない。湯気か立って(ほっくほっくあっ!)これぐらいの演出が必要なんじゃないか。
本筋としては、海と俊の惹かれあう心。高校の文化部部室塔「カルチェラタン」の存続。そして出生の秘密っていうのがテーマになっています。作品中一番の見せ場は俊と海の出生の秘密の場面なのでしょうが、カルチェラタンで生徒たちが大合唱するシーンも印象的です。あの生徒たちの合唱、表情は良かった点です。滴り落ちる涙がジブリです。
本作において宮崎駿氏は失敗作と言っているそうですが、本人が描いたらどういう作品になっただろう?と比較するのは面白いです。個人的には60点はレンタルにおいての評価ですのであしからず。