ソニーやパナソニックのテレビ事業が巨額の赤字を計上している。その裏ではサムスン電子やLG電子といった韓国勢が勢いを強めている。日本ではLG電子のテレビがやっと家電量販店の売り場に並び始めた頃ですが、アメリカなどでは韓国勢のテレビは高価格帯の商品として認知されているらしい。先日、ふらっと立ち寄ったヨドバシカメラでLG電子のスマートテレビ(まさに、この本で取り扱っているような商品)。YouTubeに対応している事は勿論、Huluなど様々なネットサービスに対応している。日本勢の最新テレビに比べると素人目にも画質が悪いのは明らかですが、デザインも悪くなく、これが世界で売れるテレビなんだと痛感した次第であります。
スマートテレビとは何のか?簡単に説明すれば「ネット対応」「動画のストリーミング配信」などが挙げられています。まだ定義が曖昧で、ソニーとGoogleが手を組んだ「GoogleTV」がスマートテレビなのか?それとも、アップルが近々に発売するであろう「iTV」がスマートテレビなのか?各社、各国、お国事情によって様々ですが、間違いなくテレビはネットに近づいている現状があります。アメリカで爆発的な普及を見せる「ネットフリックス」の定額の映画配信サービス。画質的にはブルーレイなどに劣るものの、ユーザーのニーズを的確に捉えたサービスだと思います。日本ではまだツタヤなどが実験段階ですが、その勢いは本国アメリカでのネット回線の下りの3割(YouTubeですら1割)を占めるほどだそうです。意外と知られてない事実ですが、アメリカで販売されている任天堂の「Wii」や「Xbox360」などには、ネットフリックスのサービスが組み込まれているそうです。
日本でネット配信が進まない一番の理由は、一つには権利。2つ目にはレンタルビデオ店の数でしょう。世界に稀を見るほど整備されたレンタルビデオ店網があるので、別にネット配信に頼らずとも100円で1週間借りられる。1本100円を切る価格でそれも大多数の人に受け入れられるサービスを開発するのは難しい面もあります。ツタヤが指揮を取るのかソニーが指揮を取るのか、個人的な想像ですが、そういった小競り合いが安易に想像されます。その一方でテレビ番組のネット配信は進まない。ネットで先行しているのが公共放送のNHKという事には驚かされます。
オワコン(終わったコンテンツ)とネット上で揶揄される日本のテレビ番組。最近は、本気で観たい番組というのは減っている。やれ合体だ合併だと1時間のものを無理やりSP番組っぽく表示は胡散臭い臭いさえ漂う。本書では「アンテナから離れるテレビ」と題して日本のテレビの未来が書かれている。事実、こういう方向に進むのは不可避だと思います。「水曜どうでしょう」や「内村さまぁ〜ず」のようにDVD発売を見込んだ番組制作も増えています。BeeTVなどの例もあるように、今、日本のコンテンツ産業はある意味でニッチ、急激に小規模な集団への訴求に舵を切りつつあります。それはアメリカで起こったケーブルテレビ局の爆発的な普及のようです。
ネット配信を使い、好きな番組を呼び出して見られるようになっているのであれば、そもそも録画する必要はないのだからだ。今後、番組はテレビで放送されるだけでなく、ネット配信されることも前提になっていくだろう。(中略)そのまま配信するたけでは利益に繋がらない番組の場合、スムーズにネット配信できない可能性もある。たが、それでも「アンテナ線」につながったテレビという形態からの脱却は進むだろう。今、すぐスマートテレビに倍の金額を出す人は少ない。しかし、それが殆ど価格に影響を与えない程度で、今のテレビに付加価値を与えれば、買い替えの時の材料になるだろうと、説明されている。
単に作るのではなく、新しい姿に変わること。その結果としてスマートTVを生み出せたならば、家電メーカーはもう一度生き返れるはずだ。と、締めくくられています。それが日本メーカーなのか、韓国メーカーなのか、アップルなのかは分からない。でも確実にテレビはスマート(賢く)なっていくことだけは間違いなさそうです。