社会現象を巻き起こし、深夜アニメながら興行収入19億円を叩き出した「けいおん!」の劇場版。アニメ版では高校の卒業式を最後でしたが、劇場版は卒業式と本編の間に挟まる卒業旅行が舞台になっている。これは正直に言うと、「けいおん!」の独特のノリを一般の観客に受け入れられるかどうか…という点が非常に問題だ。ギターに「ギーター」と名づけて愛着を持つ女子高生に、おじさんは付いていけな可能性は高い。でもファンにはとってはとても完成度の高い作品となっている。まさに、ファンのために作られたファン待望の作品たと思う。
桜高軽音部で結成されたバンド放課後ティータイムのメンバーは、卒業式が迫っている中、卒業旅行を計画していた。唯(声:豊崎愛生)たち4人と後輩の梓(声:竹達彩奈)との思い出を作るために卒業旅行先をくじ引きで決める事になる。数々の候補先ができるが、結果的にはカメに選択を委ねることに…結果、卒業旅行はロンドンに決定した。メンバー5人は最後の思い出作りへ、そして、梓への卒業のプレゼントとして、あるものを計画していた…。
京都アニメーション製作という事で、ロンドンのクォリティがすごいです。空気感というか、まさにロンドンの町並みが再現されている。結果的に、いつもの放課後ティータイム的なノリで終始展開されていきます。唯の相変わらずの天然ぶり、律のあいかわらずの自由っぷり。1期、2期を観てきたファンにとってはたまらない。本編ではすし屋での突然の楽曲披露やフェスティバルへの参加などライブシーンが多いのが魅力の一つ。アニメ版では放課後のティータイムのぐたぐた感が魅力的だったわけですが、その点、映画版はきっちりしています。実は、この旅行にはもう一つの目的がある。後輩である梓へ、先輩として送る楽曲を製作する事であった。最後の最後、クライマックスにその曲が披露されるわけだが、放課後ティータイム的な良い卒業ソングになっていると、個人的には思う。YouTubeに動画があるのですが、これはかなりネタバレ(これを聴いたら本編が観られない)ので、別に紹介はしません。タイトルは「天使にふれたよ」です。最後の演奏シーンの演出は鳥肌もの。そして、卒業式へ続くストーリー。アニメ版では1人になる梓視点で物語が展開されていますが、劇場版では唯たちがあずにゃんに何をしてあげるのか?がテーマになっています。
卒業する事は悲しい。でも終わりじゃない…そんな思いが伝わってくる。
さて、本作を万人にオススメするかどうか…だが、アニメ版を観ていない人は「観ない」事をオススメする。最低でもアニメ1期くらいは観ておかないと付いていけない。終始、女子高生がお菓子を食べたり、ロンドン町並みを楽しんだり、ワイワイガヤガヤトークする作品だ。僕は1期と2期の半分まで観て視聴しましたが、最終回を観なかった事が逆に良かったような気もします。あくまでこの作品はファンのための番外編という作品であって一般観客を想定していない作品だ。逆に、この作品を何の予備知識を観た人は勇気を褒め称えよう。
ファンにとっては100点を出してもいい。事実、Amazonでは160件近いレビューが付いて大半が★5つだ。ただ、非ファンだったら50点出しても良い方だろう。
最終的な判断は皆さんに、お任せします。
あっそうそう、TV版にはいっさい登場しなかった唯の両親が初登場するのもファンとしては驚きがありました。ある意味では伝統を壊す演出ですが、ここは賛否利用論あるでしょう。