大人気作「ALWAYS 三丁目」の3作目。本作では東京オリンピックが開催される1964年がテーマとなっている。正直な感想を言えば、本作は前2作品と比べるとテーマが違ってくる。1.2では戦争からの急速的な復興。誰もが中間層の仲間入りをしょうと思っていた時代。そして、本作で描かれているものは「幸せとはなんだろう?」という事となる。星野六子(堀北真希)が恋心を抱く医者の菊池孝太郎(森山未來)は、出世ではなく無償の活動(本作で言う無料診療、本人曰く「うれしい」と思える事が楽しい)に満足感を抱いている。鈴木オートを世界1の会社にする鈴木則文(堤真一)とは違う。簡単に言えば「カネで解決ではない問題」ある意味で本作は「ALWAYS 三丁目の夕日」の転換点なのでしょう。旧世代から新世代へのバトンタッチ。戦争世代とは異なる価値観の登場がそこにあると思うのです。ALWAYS 三丁目の夕日'64 DVD通常版posted with amazlet at 12.09.13バップ (2012-07-20)
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でも基本的にこの作品の主役は堤真一てはなく、茶川竜之介(吉岡秀隆)だと思っている。本作ではある人物に連載を奪われる茶川なわけだが、1作目のそれと比較される終わり方でもあるが、それが本当に正解だったのか?ある意味ではバレない事がよかったのかもしれない。ただ本作を通じて語っている事は、「本当の幸せってなんなの?」という事かもしれない。たぶん、今の10代、20代が観ても理解に苦しむ場面があると思う。やはり50代、60代が観て「やっぱり幸せってああだよな」とお酒でも飲みながら語るのには最適な作品です。
生活保護が200万人を突破し、核家族化が普及した現在。マンションに住んでいれば隣に誰が住んでいるのかもしらない時代にとって、東京オリンピックを近所の仲間と観る事、それが幸せとは限らないが最新の家電が子どものおこずかい程度にコモディティ化された現在、この作品が普及する背景にはそういった幸せを求める声があるのかもしれない。田中角栄の日本列島改造論により日本は画一化された社会になってしまった。一億総中流時代、今やその影に格差社会という問題を抱えている日本。そんな時代に、我先にと成功を求める日本人が居た事を忘れてはならない。そう、それは今の中国のように。ある意味で本作はそんな日本人に新しい刺激を与えてくれる。カネじゅないんだ!名誉でもないんだ!そういう団結的なものが1964年にはあった。それを忘れてはならない…それが本作のテーマにもなっている。人情物としての完成度も高い。CGの完成度も高い。世代に関わらず心に残る作品だと思います。