3.11の原発事故。エネルギーを原発に頼ることが難しくなった今、自然エネルギーの普及は不可避のよう思える。太陽光発電、風力発電などが注目を集めている。孫正義氏が進めるメガソーラーなどには夢を感じてしまう。固定買取制度も始まったし、将来的には自然エネルギーが消費電力の数十%を担うのではないかと。しかし、本書ではそんな次世代のエネルギーを担う自然エネルギーに対して否定的な見方をする。発電効率が悪い、火力や水力に比べる、エネルギーとしての利用は難しいのではないか?と。意見としては示唆に飛んでいるし、興味深い点がある。
自然エネルギーよりも従来型のエネルギーの方が効率的に良い。それは理解できる。ただ、どこかに夢があっても良いのではないかと思った。今は発電効率が悪いけれど、大量に設置すれば電力を賄える。太陽光の未来は明るい、風力の未来は明るい。ある意味で短所と長所が裏表になっているようだ。別の言い方をすれば「ねぇ、自然エネルギーはダメでしょ。火力や水力にもっと注目しょうよ」と感じてしまう。
確かに、風力発電や太陽光の発電効率が20%台なのは理解できる。孫正義氏が提案するモンゴルのコビ砂漠に太陽光パネルを設置して、高圧電線で日本まで持ってこようという「アジアスーパーグリッド」案。例えば、ゴビ砂漠の面積130万平方キロメートルに、毎日100平方キロメートルの太陽光パネルを設置しても完成まで36年かかるそうだ。太陽光のパネルの耐久年数は20年程度なので、全てを設置は困難だと著者は説明する。
基本的に本書が言っている事を要約するなら「太陽光、風力はエネルギーとしてダメ」「火力や水力の効率を上げる事でエネルギーの需要に耐えろ」というものだ。一般人は太陽光のパネルは年々価格が下がっていると思っている、僕もそう思っていた。しかし、ここ数年は約40円代で推移し、発電コストに大きな変化は無いという点は驚きだった。ただ世界は進化しているとも思う。発電効率100%の太陽パネルが開発されても不思議ではない。風量の効率だって50%、60%も今の技術をフル動員すれば、解決できないことはないと思う。そういう夢を感じたっていいのではないか…。
風力発電も太陽光発電も「タダで無尽蔵に使えるエネルギーです」と強調されるが、元の風力や太陽光は地球上に広く分布してしまっているので、価値は限りなく薄められ、低くなっている。したがってそれをなんとか集めてエネルギー源として利用しても、すでに集中の行程を終えている化石燃料にコスト面で勝っていくのは相当難しいわけだ。というか、地球全体を一つのシステムとして考えた場合、集中の手間が新たに必要になる。「自然」エネルギーが優位性を発揮することは、たぶん永遠にない。この本で、著者が言いたい事は、この文に集約されるでしょう。
自然エネルギーの未来は暗い。
自然エネルギーの未来は明るい。
知識や立ち位置によって意見は分かれると思う。ただ、一つの意見としては参考になる本だと思う。個人的には、日本の固定買取制度がお手本とするドイツの例はどうなのか?と考える。発電に対する自然エネルギー率20%を達成し、今後も自然エネルギーの普及の勢いを増してくるだろう。一部では、「固定価格買取制度」による電気料金の値上げが社会問題となっているそうだが、原発に依存するのが難しくなった日本において、ある程度の電気料金の値上げ許容されると思う。僕の意見としては、自然エネルギー100%を実現してくれるのなら、2倍までなら耐えられる。日本は乾いた雑巾だという比喩が使われるが、照明をLEDに変更したり、まだ改善の余地はあると思う。本書で語られている事の前提は、現状の電気利用金で…という事だろう。10倍の電気代を払っても自然エネルギーが良いというのなら、日本の自然エネルギーの未来は変わるのかもしれない。やはり、国民の選択と覚悟が問われていると思う…。