著者は、「村上福之(むらかみ・ふくゆき)株式会社クレイジーワークス代表取締役 総裁。いわゆる社長です。現在37歳。会社の社長という立場ですが、その経歴はかなりぶっ飛んでいる。8歳でプログラミングを始める。その後はパナソニックでSDカードの開発やプリンターのドライバー開発など技術職としての経験を積む。そこまでの経歴は華々しい。しかし、会社をやめ一時は実家に引篭もっていたそうだ。自分の母親に「アメリカンドリームなんて夢ないで!」と言われながらも、自身の会社を設立するわけだが、その経緯が凄い。会社の起こし方が分からず、役所の職員に手取り足取り教わって設立した。営業では「営業って何をすれば良いんですか?」と聞く始末。でも仕事としては成り立っているらしい…そこが凄いと思った。

Twiiterのフォロワーが1万人以上いるらしいが、恋人も妻もいず土日は1人で過しているそうです。

「ソーシャルもうええねん」、刺激的なタイトルですが、内容は至って健全です。ネット会社で社長を務める著者が経験を活かしながら、ネット社会における興味深い考察をしている。本書はブログで執筆されたものを、時代の変化に合わせて大幅に加筆したものです。

「TwitterのフォロワーやFacebookのいいね!はお金で売買されている。大体、5000人で3800円。5000いいね!が約1万6000円。」

「ソーシャルメディアが流行った理由はゲームのクォリティ以前に、日本に課金のお金を払う余裕があったから。アメリカのジンガがモバゲーなどに勝てない理由は、そもそも新興国のユーザーにお金を払う余裕がないから。ソーシャルゲームの高額アイテムが売れる理由は、開発者には分からない。とりあえず、値段を上げていったら買う人が大勢いた。」

「ソーシャルメディアのユーザー数は不確か。アルゼンチンの人口の半分近くがFacebookに登録しているが、まず、確かめようがない。ユーザー数が多ければ多いほど投資家から多くの資金を調達できるために、架空のユーザーが多くいるのではないか?」

といった興味部深い考察をしている。

個人的に一番興味深かった箇所は以下の文に要約される。
「お金を払う」ではなく、「お金をもらう」とスキルは高速で身につく。
あー、確かにそうだなって思いました。英会話スクールに多額のお金を払って殆ど英語が身につかない人がいる一方で、親の都合で海外に転校した子どもが短時間で英語が学べる。といった事と、似ているのかもしれません。本書の中では、「時間がかかってもいいから格安で仕事を引き受ける」事を薦めています。例えば、「時間はかかりますが5万円でアプリの開発をできます」といったもの。著者はそのために、まず起業しろ!と薦めています。

後半では、ネット業界で生き残る方法や仕事のあり方など、著者が今まで経験した事を参考に、「好きなことをやれ、という大人は無責任」「世の中、金ではどうにもならないことがたくさんある」といった事が書かれている。「nullなり適当な値を突っ込んでコンパイルする勇気」nullとはコンピューター用語で「何も無い空っぽ」という意味ですが、本書の貫く言葉だったりします。たった1日で作ったサイトをヤフオクで150万円で売った話しなど、やや突飛だが、起業するまでの経緯など今からネット業界に足を踏み入れる人の指南書としても面白いと思った。本書を一言で説明するなら、「すぼらな誠実」かもしれない。

世界はどこに向かうのだろうか?本書では最後にこんな記述がある。
先進国はどんどん落ちていって、新興国がどんどん上がっていって、「世界全部が平均値くらい」に落ち着くんじやないかと思っています。それがグローバリゼーションの最終形だと思っています。(中略)日本はこれから、経済や、国としての意識がどんどん悪くなるかもしれません。何も考えないで生きている人ばかりだと、日本という国は、世界の中の平均値な国にどんどん近づいていくでしょう。しかし、あなた1人でも、世の中のために、何か行い、世の中によい影響を与えていきたいと真摯に願えば、いい方向に向くと思います。
大体、この手の本は1400円くらいが相場ですが、本書は1000円出してお釣りがきます。気軽に手に触れられる、でも中身は気軽以上のものがあると思います。