テレビは余命7年
テレビは余命7年
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指南役
大和書房
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テレビ墜落についての著書は何冊か出ている。僕も何冊か読んでいるが、その中でも一番の良書だと思う。タイトルから連想すると過激な内容を想像するが、テレビの歴史から現在に至るまで丁寧に書かれている。確かに、最近は生で観たいほど待ちわびる番組があるだろうか。ひな壇芸人のトーク番組。ぽっと出の人気俳優を起用したいドラマ。しかし、テレビの未来は暗いようで明るいのではないか?とも思う。ソーシャルネットが普及し、爆発的な口コミで良質な番組の情報が広まる。テレビ離れはテレビ局のいい訳だとも思った。

その昔、テレビは街頭で見るものだった。家にテレビが入ったのが東京オリンピックの頃だろう。その頃は、テレビが娯楽の王様だった。視聴率60%、70%も稼ぐオバケ番組があった。今は、テレビを見ない若者も増えているらしい。テレビの大きな転換点は2つあると思う。一つ目が、家庭にリモコンが普及し始めた頃。二つ目が、ソーシャルメディアが普及した今。その昔、一度テレビを付けたら殆どの家庭が同じチャンネルを見ていた。しかし、リモコンの登場によって「ザッピング」という手法?が生まれた。つまらなければ、すぐにチャンネルを変える。最近は、テレビ離れという言葉をよく耳にするが、実情は違うらしい。テレビの視聴率は統計を見てもネットの登場によって右肩下がりに落ちているわけではない。しかし、ネットを見ながら、スマホをいじりながら。という人が増えた。最近は3時間特番、4時間特番という番組が増えたが、そういう、ながら見を意識しての事だそうだ。

最近のテレビの不満として、CMまたぎ、山場CMというものがある。「この後、こんなことがーー!!」といったもの。これを最初に発明したのが90年代初頭の日本テレビだそうだ。「エンタの神様」などを手がける五味さん、「ガキ使」を手がける菅さんなどが発明した手法だ。その後のテレビを大きく変えたのが、「毎分視聴率」の分析だ。1分ごとに視聴率を計測して、全てのシーンで山場を作る。これが、テレビ業界によって弊害だったのではないか?

日本のテレビ局とは対極に、全世界で圧倒的なシェアを確保するアメリカのドラマが好調だ。「24」「セックス・アンド・ザ・シティ」「プリズン・ブレイク」など。アメリカの人気な理由はその製作過程にある。「フィンシン・ルール」というものがある。これは、テレビ局に番組の売却を禁止するというもの。これによって、アメリカの場合はドラマなどの著作権が制作会社にある。それを、ケーブルテレビやネット局に売却する事で収益を得ている。アメリカの視聴者は厳しい。そのため徹底的にコンテンツの質が求められる。それは制作費にも現れている。例えば、「フレンズ」の30分1回のレギュラー出演者1人のギャラは1億円だったそうだ。1シーズンあたり140億円。これが制作費ではなく、ギャラだけなのがスゴイ。

これと比較すると1回3000万円という制作費で製作されている、日本のドラマがしょぼく見れる。でも、日本のドラマも捨てたものではない。人気俳優を起用せずに成功した「マルモのおきて」。そして社会現象を巻き起こした「家政婦のミタ」。最近では、テレ朝の「ドクターX」が24.4%という高視聴率をたたき出した。日本のテレビは終わったといわれて久しいが、これは本当なのだろうか?と思う。テレビ番組がつまらないだけで、視聴者はテレビを捨てたわけじゃない。著者はこういう。
そう、共感。作り手が志を持って、本気で取り組んだものは、必ずや視聴者の心に届く。視聴率よりも志。いや、志のある作品は、そのうち視聴率もついてくる。今はソーシャルメディアの時代。評判のい作品は、必ず人々の耳に伝わる。
テレビの余命は7年。著者は最後にこう締めくくる。
7年後の2018年。来るべき大事件とは、僕は民放キー局の1つがかつての北海道拓殖銀行と同じく、消滅すると予想する。
ホリエモンや楽天の三木谷社長、ソフトバンクの孫さんがテレビ局買収に動いたように、今後、ネットとテレビの融合が実現する可能性も否定できない。僕が大好きなテレビが消えないために、今後、ますますコンテンツの質が問われるのかもしれない。