誰も教えてくれない 一流になれる読書術 (アスカビジネス)
丸山 純孝
明日香出版社
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読書術に関する本は色々と出ています。速読を煽るものから、要点だけを読み取るもの。「フォトリーディング」や「精読」を重点に置くものまで、様々です。それだけ読書に悩んでいる人が多いのでしょう。今回、紹介するのは、そんな読書術に関する本です。著者である丸山純孝さんは、メルマガ「エンジニアがビジネス書を斬る」を発行している方で、読者は約1万6000人。1日に1冊ペースで本を読破している多読家です。僕も色々な読書術に関する本を読んできましたが、一番、しっくり来る読書術の本でした。簡単に要約すれば「健全」という事でしょう。速読などは専門的な知識が必要ですが、本書の中で語られている事の多くは今から、明日から実践可能です。

●読書をする前に目的を決める。

読書をしていて一番気を付けておきたいのが「目的」を持つ事です。小説などは娯楽として読んでもいいと思いますが、ビジネス書や新書、経済書などは、自分で本を読む「目的」を見つけると、より読書が充実します。本書では「学習」と「情報収集」の二点で目的を持つといいと説明しています。例えば、政治であれば漠然と本を読むのではなく、「安部政権が実現する2%のインフレターゲットとは何か?」という目的を持つ事で、ピンポイントで本を探せますし、読んだ際の記憶定着度も飛躍的にアップします。

●100%の人のためになる良本はない。

日本の全人口は約1億2000万人と言われいます。よくベストセラーで100万部というのが大ヒットの境になっていますが、それでも人口においては1%にしかなりません。つまり、殆どの人がその本を読んでいないという事です。それに加えて、読んだ人全てが満足する事は不可能に近いです。人によっては「この本は内容がイマイチだったな」という感想もあれば、「すごい名著だった」という価値観もあるわけです。
書籍は、書籍として存在しているだけでは「知識」という価値しか持ちません。人間がそれを読んで受け止め、行動に変換して何らかの成果を出すことによって、無限に近いくらいの価値を生む可能性を秘めています。逆に、行動に変換して何らかの結果を生みださない限り、「価値」としては存在していないことになるわけです。
ベストセラーを読んで「この本は自分にとってピンと来なかった」と嘆くのは誤りです。

●良書と出会うコツ。

最近は、アマゾンや楽天ブックスといったネット書店で購入する人も増えました。そういう時に重視するのが、やはりレビューといった評価です。しかし僕は、リアル書店に無い本を注文する以外はネット通販はあまりお勧めしていません。それは勿論、しおりが貰えたり、本にカバーをかけてくれたりといったメリットはあるのですが、やはり本を実際に手にとって見られるという部分は大きいです。本書では良書と出会うために3つのポイントに注目してみょうと説明しています。

1.まずはタイトル。
2.「前書き」と「後書き」のチェック。
3.短期間に同一ジャンルで多数の本が出ていたら注意。

僕も前に、本において「前書き」と「後書き」の重要性については書きました。何故、両方をチッェクするのか?というと、本でいいたい事。本でいったことが要約されているからです。「前書き」と「後書き」が面白い本は文句なく面白いです。これがリアル書店で買う大きな利点です。

●本を読む目的を見失わないこと。

「多読」を始めると、ある問題に直面します。それは、「この本は以前にも読んだけど、どの本だったっけ?」という事です。本を読む時には目的を見失ってはいけません。
本書では何度も出てくる話ですが、「誰のために読書しているのか。それは自分のためである」という事を忘れてはいけません。自分の目的を満たすために読書しているわけですから、外部の意見は参考にするのはOKですが、それに従っているだけではダメだということは自明の理ですよね?
例えば、ただ漠然と読むのではなく、「経済のデフレに対する勉強をしょう」「本を効率よく学ぶための方法を学ぼう」といった事を意識する事が大切だと思います。

●本を手元に残す3つの基準。

我々のように多読家が一番悩むのが、その蔵書をどうするのか?です。全てが名著で後世に残したい本なら全ての本を残しておけばいいですが、必ずしも全ての本が良書とは限りません。たぶん打率で言えば4割行けばいい方ではないでしょうか?駄本は手元に残しておいても特に価値はありません。僕の場合では言えば、数ヶ月ごとに本棚を整理してブックオフなどに売却しています。とりあえず名著は目の届く位置に。駄本は下の段に入れてあります。それで駄本が貯まったら、処分。

その資金で新しい本を買います。
では、捨てる本と残す本の基準とは何なのか?本書ではこう書かれています。

1.1回目読んだだけでは内容が理解できない本だったので再読を考える本。
2.ぜひもう一度読みたいので置いておく本。
3.好きな著者の本。
だいたいこの3つの基準で残すかどうかを私は決めています。そして、もう一つ頭に置いていることがあります。それは「本を残しておくこともコストである」といこと。(中略)もう一度読みたくなったときにもったいないじゃないか、と思われるかもしれませんが、その時は再度買えばいいことだと思っています。スペースコストや整理のコストと比べて、購入するコストが安ければそれでいいわけですからね。
●読書は最も安い自己投資。

この話を聞いた人は意外と多いと思います。そうです。本こそ株や債権よりも高リターンを提供してくれる。それも、「ハイリスクハイリターン」ではなく、「ローリスクハイリターン」です。何故、本がそれほどまでのハイリターンを得られるのか?というと、著者が体験してきたことをたった千数百円で共有できるからです。何年という歳月をかけたノウハウも、天才経営者の手腕もほぼ単行本であれば同一価格で買う事ができる。例えば、株の神様と言われるウォーレン・バフェット氏の投資術。彼とのランチ代はオークションで1億円近い価格になったそうです。その手法がたった千数百前の本で学べるのです。時間術にしても、経営術にしても、営業術に関しても全てが簡単に手に入る。なのに、今の人は本を読まないらしいです。

先ほど100万部でも人口の1%の人しか読んでいないという話をしましたが、最近では10万部でベストセラーですから0.1%。全人口では殆どその本を読んでいるのです。この秘められた価値はすごいと思います。という事は、本1冊を読むだけで、他人よりも圧倒的に優位に立つ事ができるのです。
全体で100人の人が本を読んだとしても、行動するのは2割の20人。そのうち実際に継続するのはさらに2割しかいないと。つまり行動を継続するだけで上位4%にいることができるのです。この数字だけは、どんなときでも暗唱してすらすら出てくるようにしておきたいと常に思っています。
もっと読書家が増えたらいいなー、って思います。