喫茶店とは、どんな場所だろう?多くの人は「休憩する場所だ!」と答えるだろう。中には「勉強をする場所だ!」という人もいるはず。本書「15分あれば喫茶店に入りなさい。」は、喫茶店を有効活用して、仕事や勉強をはかどらせる方法が紹介されている。といっても、書かれている事を要約すれば「15分あれば喫茶店に入りなさい。」という事に尽きると思う。普段から喫茶店を利用している方にとっては、「なーんだ!」といった情報が書かれているかもしれい。しかし、普段、喫茶店を休憩の場所としか考えていない人にとっては、目から鱗の情報が満載だと思います。
15分の余裕があったら、私は必ず喫茶店に入ります。場合によっては10分でも入ってしまいます。喫茶店に一歩足を踏み入れた途端に、意識が変わります。仕事モードのスイッチが入ります。私にとって喫茶店は、のんびりくつろぐ場所ではありません。もちろん書斎でも仕事をしますが、全仕事量の半分以上は喫茶店でやっています。なぜ喫茶店なのか。いくつも理由がありますが、ひとつ挙げるとするなら、どんな仕事も、とりかかるときがいちばん面倒くさいからです。家で仕事をする。仕事場で仕事をする。どれも日常の中の風景ですが、「ちょっとだらけた公共性」が、自分をコントロールするのに最適だ。と、齋藤氏は言います。確かに、家はプライベート空間。職場は仕事オンリーの空間。その中間に位置するのが「喫茶店」とも言えます。その上で齋藤氏は喫茶店での「垂直思考」を薦めています。
自分のなかの深いところで思考を進めるのが「垂直思考」です。最近では殆どの人が利用するインターネットについて、「喫茶店でインターネット依存から脱却する」という章で、喫茶店でインターネットを利用しない3つの理由を挙げています。
1.知りたいことに対して、確かな情報が期待できない。
ここでは「ゲーテとニーチェの関係は、どのようなものだったか」という情報の例が挙げられていますが、確かに、今の検索エンジンで検索できるのは、ブログやホームページにとたどり着くまでです。それも、良質なリンクが張られているサイトは良質なページだ…というアルゴリズムに基づいて構築されています。
2.検索やネットサーフィンで時間が消費される。
これも頷けます。一度、ネット検索を始めると、あれもこれも…といった具合にドンドンとネットで検索してしまいます。その上で齋藤氏は、「ネット検索をいくらしても頭はよくならない」と、ばっさり。
3.インターネット依存は水平思考を促す。
インターネットを利用していると、考えが次から次へとスライドし、垂直に深まらない。短時間でもいい。それこそ喫茶店にいる15分や30分の間に考えを、水平から垂直に変える時間が必要です。
一見、騒がしいようで集中できる場所ではないと、思われがちですが、その中で一気に集中する。30分単位でモードを切り替えるといいそうです。そのためには、ストップウォッチなどを持っておくといい。スイッチを押した瞬間に仕事の6割は終わり、と書かれています。コーヒー1杯300円が高いか安いかは、コーヒーが美味いかマズイかというより、その場の空間だと思います。例えば、スタバのコーヒーは高いですが、あの空間とセットだと考えれば、決して高くはない価格と言えます。
どんな人が仕事ができる人なのか?それは「懸案事項」が多い人だそうです。
懸案事項とは、心に引っかかっていること、問題となったまま結論が出ずに宙ぶらりんにペンディング(保留)されているもののことです。(中略)優秀な人というのは、「いま、なにを考えなくてはいけないのか」をちゃんとわかっている人です。言い換えれば、懸案事項が多い人は仕事のできる人です。家の近所の喫茶店は、おばちゃんばかりで、とても勉強や仕事できる環境ではありません。ただ、スタバやルノアールなど少し洒落たお店で仕事や勉強をするのは、いいと思いました。本書を読んで強く思った事は著者である齋藤さんは、すごく喫茶店が好きな方なんだな…と。仕事場でもない自宅でもない、「中間地帯」としての喫茶店。今まで休憩場所や友達などと、おしゃべりをする場所だと思っていた僕にとっては、刺激的な本でした。ただ、仕事や勉強で喫茶店を日常的に利用している方にとっては、少し物足りないかもしれません。