ピカソは本当に偉いのか? (新潮新書)
西岡 文彦
新潮社
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50点という点数は、いい意味でも悪い意味でもなく僕には判断できないという意味で付けました。

ピカソと聞くと、誰もが思うのが「ピカソの絵って何が凄いの?あんな変な絵なのに…」という事だろう。そんな僕もピカソの絵については概ね同じ感想だった。海外のオークションで1枚の絵が数億円。数百億円の価格で売買されている。尾田栄一郎や鳥山明の絵だったら納得がいくが、あんな絵に大枚はたく人の気が知れない。そうも思う。本書「ピカソは本当に偉いのか?」では、そんなピカソの絵の秘密やその人となりを解説する。

僕らが抱く、ピカソについて著書では、以下6つの疑問が紹介されている。

1.この絵は本当に美しいのか?
2.見る者にそう思わせる絵が、どうして偉大な芸術とされるのか?
3.かりに偉大な芸術としても、その絵にどうしてあれほど高値がつくのか?
4.ピカソのような絵であれば、誰でも描けるのではないか?
5.そういう絵を偉大とする芸術というのは、どこかおかしいのではないか?
6.そういう芸術にあれほど高値をつける市場も、どこかおかしいのではないか?

一つ言えば、この疑問の詳細については最後の1章が割かれている程度です。この本はピカソの生い立ちを振り返りながら、ピカソの絵(よく言う「あんな絵」)になった理由を探るというのが主なテーマです。あんな絵を描く一方で、ピカソの普通の絵(デッサン)は天才的に上手い。たまに、テレビ東京の「なんでも鑑定団」で登場しますが、ピカソはあえて、ああいう絵を選んだそうです。本書では題材としてピカソの名画「アヴィニヨンの娘たち」という絵が取り上げれていますが、我々のようなピカソ素人にとってその絵はイマイチぴんときません。ただ、読んでいるうちに、ピカソの生い立ちや恋人、そして経歴を知っているうちに、薄っすらとだけ理解できる。一つ面白い話としては、ピカソが生前に残した作品は油絵だけで1万3000点。陶芸などを入れると約13万点にもなります。その遺産は価値は7300億円とも言われているそうです。ゴッホなどが苦しい画家生活を送った一方で、対象的なのがピカソでしょう。彼がお金に困ったのは、たった2年弱だそうです。

この本はピカソという人物以上に、ピカソが生きた時代の芸術について深く学ぶ事ができる。
ピカソの背後には恋人、愛人、妻など、様々な女性がいた。それが自身が描く絵に反映していた。というのだから、それはそれでドキュメントとして面白いと思います。たぶん、この本はピカソ好きが読めば、間違いなく面白いと思います。ただ、ピカソ初心者には、もっと初歩的な本をお勧めします。