Jポップとは何か―巨大化する音楽産業 (岩波新書)
烏賀陽 弘道
岩波書店
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Jポップと言えば、もはや日本の音楽の代名詞といっても過言ではない。しかし、この言葉の登場が1990年初頭の事だった事を知る人は少ないと思う。この言葉を最初に使ったのはラジオ局の異端児である「J-WAVE」だった。当時、J-WAVEは邦楽は流さず洋楽に特化したラジオ局だった。そこに何とかして、邦楽を流そう。そう考えた宣伝担当者との中で生まれた言葉だった。

本書「Jポップとは何か」では、その歴史を紐解きつつ、邦楽の栄枯盛衰を綴る。邦楽がヒットした90年代。その市場規模はたった数年で2倍になった。小室哲哉やB'zなどを思い浮かべればいいだろう。今やCDを買う事自体が死語となりつつあるが、昔は若者がヒット曲が発売される度にCDショップに群がった。レコード時代からの爆発的な普及。その昔、レコードは大人の男性が聴くものだった。それがCDプレイヤーの発売で状況はいっきに変わった。発売当時は10万円近くしたものが、ソニーが製造コスト10万円に対して5万円という破格の価格で発売された。これがCD普及の一因である。デジタル化は音楽業界にどんな影響を及ぼしたのか?これはCD不況との大きな関係がある。それは、音楽への「デジタル化」の波だ。今や音楽はパソコンで作る事が当たり前になった。それは小室哲哉に代表されるような、プロデューサー主義。別の意味では、「打ち込み音楽」とも言える。今や殆ど全ての作業がプロツールで行われるようになった。しかし、それが音楽業界に悪い影響を及ぼしていると指摘する。

つまりは、打ち込みによって画一化されてしまった。リアルの音ではなくサンプルを元に作成された音。技術の進歩によってリアルの音と遜色がないほどの音が出せるようになった、。それが音楽の画一化を招いている。
もっとも画期的だったのは「ピッチ補正」と「クオンタイズ」が可能になったことだろう。「ピッチ修正」とは、演奏や歌のミスで音痴になった音符だけを取り出して、録音のやり直しなしに修正する機能である。(中略)「CD一枚で300カ所修正した」というエンジニアの話を聞いたことがある。こうなると「レコード=記録」という定義そのものが怪しくなる。
今では当たり前になった「タイアップ」は音楽業界にとって諸刃の剣だった。ヒット曲がでる一方で、格差が生まれてしまった。人気アーティストには沢山のタイアップが生まれる一方で、人気のないアーティストには宣伝費が殆どつかない。その結果、真ん中の層がなくなってしまった。

日本で洋楽が聴かれる一方で、欧米で日本の音楽が聴かれる事は殆どない。Jポップの99.5%が日本国内で消費されているそうだ。音楽は売れないと聞く。それはある意味で、音楽業界が爆発的な成長を未だに引きずっているからなのかもしれない。本書では、そんな音楽のヒットと衰退の歴史を綴る。