アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ (文春文庫)
ジョー マーチャント
文藝春秋 (2011-11-10)
売り上げランキング: 21,198

1900年初頭、海底に沈む古船からある不思議なものが発見された。複数の歯車があり一見すると機械のように思える。それが長年に渡るロマンを生む事になる「アンティキテラ」だった。約2000年前に作られたと見られる機械だった。この発見と解明の過程をドラマチックに綴る。科学ミステリーでは「フェルマーの最終定理」が一番と思っていた。でも本書はそれに匹敵する。たぶん、そんじょそこらの小説よりも抜群に面白い。一見すると腐食したブロンズだが、そこには現在の科学でも驚くような天体に関する秘密が隠されていた。この謎はある意味で技術の進歩と、平行している。第2次世界大戦や歴史を経て、技術の進歩のたびに開発されていく謎が解明していく。当時は推測でしかなかったものが、X線などの発明により、隠された文字や形が浮かび上がってくる。

人の手を経て、謎は深まり、そして解明していく。

未だに解明は続いているので完璧に解明されたとは言えないが、その技術は18世紀のものとしか考えられないような高度なものだった。正直に言うと本書で綴られている「アンティキテラ」の機能についてかなり難解だ。読後の感想としては「すごい機械だ、こんなものが2000年前に発明されていたなんて」と思った。詳しい機能については理解できなかった。たぶん、というか別に、それでいいと思う。この本は古代の技術が解明されていく様子をドラマチックに描く。それが面白いのだ。ある学者が答えを出し、それに反論し、新しい解釈が生まれていく。その2000年の物語。ちょっとでも科学や歴史に興味があれば、是非、読んでみてください。