本書は「週刊ダイヤモンド」の特集を、Kindle用に発売したものだ。100円という低価格。その内容は30数ページという少なさだが、電車の待ち時間やちょっとした合間を使って読むには丁度いい。最近では、長寿番組であった「HEY HEY HEY」がその長い歴史に幕を閉じた。音楽番組が視聴率を取らない背景には、売れる曲がない、売れるアーティストがいない。というのが大きな理由だったりする。世界的に見れば音楽業界の未来は暗い。実は、世界で最もCDが売れている市場が日本だったりする。世界最大のマーケットであるアメリカでは、iTunesに代表される格安のネット配信が普及し、音楽の入手場所が配信サイトへ移行しつつある。誰が音楽を殺したか? (週刊ダイヤモンド 特集BOOKS(Vol.1))posted with amazlet at 13.03.29ダイヤモンド社 (2013-01-28)
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iTunesへの楽曲配信を拒んだソニーは、こう揶揄されている。
「遅せーよ!(中略)ベルリンの壁崩壊時に例えるとソニー側が東、Apple側が西」小室哲哉全盛の時代、1998年に6000億円の市場であった音楽業界は、今や3分の1にまで縮小した。
最近のニュースで、音楽CDの売り上げが14年ぶりに前年を上回ったという情報が流れた。これも実を言えば、AKB48の総選挙投票券や握手券めあてに、1人で大量に買う人が多かったり、ユーミンに代表される大御所アーティストのベスト版が発売された影響が大きい。今年、2013年の「音楽業界は玉切れ」と言われている。その一方で伸びているのが、コンサートに代表される直のマーケットだったりする。しかし順調に伸びているコンサート市場であっても、音楽CDの落ち込みをカバーする事はできない。
音楽市場と共に、ミュージシャンを取り巻く環境も激変しつつある。老舗のレコーディングスタジオが月々に閉鎖されている。今まで楽曲と歌詞をスタジオで作っていたものが、レコーディングまでは自宅で作るようになった(それは音楽編集ソフトの普及などによる、機材の低コスト化の影響もある)。それまでのように、売れた楽曲の資金を新人の育成に回す好循環が成り立たなくなっている。本書の中でYouTubeや違法配信を「A級戦犯」と評しているが、実は過去のヒットという遺産、禁断の果実に頼ったレコード会社こそ「A級戦犯」なのかもしれない。
楽曲がクソだから売れない!そう考えれば自然でしょう。100万枚売れないなら、200万枚売れる曲を作ればいいだけの話。昔は良かった、そんな懐かしい思いでに浸って未来を見る事を拒否する。未だに音楽業界は小室哲哉の呪縛にはまっているのかもしれない。消費者としては、素晴らしい楽曲を聞きたい、それにはお金を払う。レーベル側が複雑にしているだけで、構図はもの凄くシンプルなのかもしれない。