氏の本を何冊か読んでいる人には、さすがに新鮮味はない。ただ、これまでの本のエッセンスや随所で語られている大前氏の考えをコンパクトにまとめあげた書籍と言えば、その価値は高い。日本の教育では未だに、高度経済成長期の従順な労働者を育てている。しかし、世界はグローバル(大前氏の言葉を借りるなら、ボーダレス)の時代において、単純労働者は中国やアジア各国に太刀打ちする事は難しい。本書の中で語られているプロフェッショナルとは、どう定義されているのか?大前氏は、こう説明する。
プロフェッショナルは感情をコントロールし、理性で行動する人です。専門性の高い知識とスキル、高い倫理感はもとより、例外なき顧客第一主義、あくなき好奇心と向上心、そして厳格な規律。これをもれなく兼ね備えた人材を、私はプロフェッショナルと呼びたい。大前氏はこう定義した上で、プロフェッショナルになるために必要な以下の項目だと説く。
1.先見する力
2.構想する力
3.議論する力
4.矛盾に適応する力
カーネギーメロン大学のハーバード・A・サイモンは意思決定に関してこう言います。
情報を保存することと、されをすぐに取り出せるよう情報を整理することを可能にしているのは経験であると論じている。大前氏は企業は「意識」と異質の人材に投資する事。つまりは、「意識」に投資する必要があると説明する。今や大企業であっても突然死の危険が迫っている。写真印刷で世界的な企業である「ポラロイド」がデジタルの急速な普及に伴いチャプターイレブン(連邦破産制度)を申請したように、ビデオレンタルで世界的な大企業であった「ブロックバスター」がネットフィリックスなどのネット配信型のレンタル事業によって急激に業績が悪化したように。今や、先の見えない時代となった。インテルの共同創業者であるアンディー・グローブは「パラノイアだけが生き残れる」という言葉で表現しているけれども、世界はよりグローバルになりつつある。その成功は「パーソン・スペシフィック」(人材次第)であり「タイミング・スペシフィック」(タイミング次第)であったりする。
プロフェッョナルにとって議論する事も大切は要因だ。GEの元CEOであるジャック・ウェルチは真実を知るためには「座り込んで1万8000もの質問をし、それでも腰を上げずに粘ること」だと言っている。議論し、構想し、構築する。それには様々な要素がある。しかし、本書で語られている事の本質は、見えない世界において成功を納めるためには、現状に満足せず危機感を持つ事だとも解釈する事もできる。社長室にふんぞり返って新聞を読んでいたり、部下に高飛車な態度を取っている20世紀型の社員は必要ない。自分がまず前のめりの姿勢で目の前の事に集中する。航海に例えるなら、嵐を察知し安全な航路に導くこと。江戸時代のように鎖国が通用する時代ではない。今や「Twitter」にしろ「Facebook」にしろ、世界の優れたサービスが瞬く間に全世界で普及する。不安を苦しむのではなく、むしろ楽しむこと。「あくなき好奇心と向上心」が大切なんじゃないかと思います。
政治の話が殆どなく大前氏の本としては、他とは少し違った印象で面白いです。


