誰も教えてくれない人を動かす文章術 (講談社現代新書)
齋藤 孝
講談社
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文章力関係の本は色々とある。本当に初歩の初歩から応用まで様々です。本書「誰も教えてくれない人を動かす文章術」は、三色ボールペンでおなじみの齋藤孝さんが、学校などでは教えてくれない、人を動かすための文章術の極意を紹介している。よく、文章力関連の本というと、「まとめて書け」とか「短く伝えろ」といった事が書かれているが、本書の文章力は文章は書く上での土台となる技術です。

●「書くための」2つの考え方。
「書く」ときの考える力には2つあると述べました。新しい認識を得る力と、文脈をつなげる力です。文章が書けないと言っている人が、この他人の話を文章に再現する訓練をすると、自分に足りないものが何かはっきり分かります。文脈をつなげる訓練はうまくこなすことができるのに、それでも文章が書けないと自覚している人は、発見する力が足りないのです。あるいは、文脈をつなげる訓練が苦手だという人は、発見する力はあるのに、つなげる力ない可能性が高い。
他人の話を文章を再現する力をつける事は大切だと思います。文章を書くというと、多くの人が語彙や比喩などのテクニックを気にします。しかし、大切なのは文脈を繋げる力。これには、はっとさせられました。例えば、Aというものがすばらしくても、Bというものと繋がってなければ意味がない。

●他人の力で自分を「広げる」。
文章というのはほとんど自分の内部に蓄積された他人の認識だからからです。私が読んできた本は膨大な数に上ります。また自分自身、結構な数の著書を出してきましたが、その99パーセントは自分が読んできた本から得られた、他人の認識でなりたっています。自分自身で、全くゼロの状態から生み出した認識というのは、ごくごくわずかなのです。
アイディアというのは既存のものの組み合わせでしかない。そういう話を聞きます。文章も同じで、完全に新しいものを生み出す事、まったく新しい表現を生み出す事は難しいです。それよりも自分が影響を受けたものの中から、その組み合わせを変える事、それが独自性と言えるのか分かりませんが、そっちの方が自分が広がります。

●「段取り力」とは頭の中を整理すること。
文章力は、「段取り力」と言い換えてもいいと私は思っています。これさえ身につければ、頭の中が整理でき、書くという作業の半分はできたも同様です。では文章を書くための段取りとはなんでしょうか。最初に必要な作業は、書くための「ネタ出し」です。
段取り力、つまり何を書くか、何を書かないか、スタートとゴールを決める作業です。齋藤さんは、まずゴールを決めようと言う事を綴っています。スタートとゴールを決めて、走り出す。その事で、明確なゴールにたどり着く事ができるのです。

●独自の視点の見つけ方。
「認識の面白さ」とは、個人個人の独自のものの見方です。ここで「私は独自のものの見方なんてもっていないよ」と弱気になる必要はありません。独自の視点の見つけ方は2通りあります。「異質であると思われる2つのものの間にある共通点を見つけること」と、「同質であると思われていた複数のものの間に差異を見つけること」
これが本書の中で一番ぐっときた話でした。独自の視点を見つける事。それはオリジナリティを生み、説得力を増します。例えば、スイカに塩をかける行為は、一見するとまったく違うものです。しかし、かけると甘みが増してうまくなる。そのように、異質のものと、異質のものを組み合わせる事。例えば、アベノミクスとAKB48を組み合わせたりしてもいいのかもしれません。

上から目線と生意気さ、文章を書く上ではそういうものも大切なのかもしれない。
文章を書く事=素晴らしい才能が必要、という事は必ずしもイコールではありません。文章が下手でも、多少の段取りや基本を知る事で、あなたも人を動かす文章を書く事ができるはずです。実際、この手法は齋藤さんが教える大学でカリキュラムとして教えているものだそうです。最初は一行も書けなかった学生が、すらすらと文章を書く事ができるようになる。書く事に抵抗が無くなるということは、つまりは、文章を書く事が楽しくなるという事です。

そうなったらこっちのもんです。
どんどん書いて、どんどん文章の素晴らしさにのめり込んでいけます。

その手助けとして、本書はとても有用だと思います。
あー、皆にこの手法が知られちゃうな。残念!(笑)