サイバーエージェントの藤田晋社長が綴った「渋谷で働く社長の告白」から5年後の現在を綴った最新作「起業家」が発売となった。同時に村上春樹さんの新作も出たが、迷わず本書を手にとってレジに向かった、わくわくドキドキで帰宅し、早速、本書を読み始めた。「渋谷で働く社長の告白」ではITバブル崩壊による会社存亡の危機を綴っているが、本作はその後のライブドアショックやリーマンショックに関する事が書かれている。特に、「オン・ザ・エッジ」時代から親交のあるホリエモンの逮捕は藤田社長にとって、衝撃的だったそうだ。本書では、低迷する自社の売り上げに対して、絶好調で成長する「livedoor」の姿を見て羨ましく思っていたらしい。しかし、サイバーエージェント自身は企業買収に積極的ではなく、健全な運営を心かげていた。買収する勇気が無かったともとれるかもしれないけど、、。
本書を読んで思った事は。
「藤田社長にカリスマ性や天性の才能はない。」
という事だろう。
「渋谷で働く社長の告白」でもそうだが、藤田社長は子供の頃からプログラミングをいじってました。とか、大学でコンピューター工学を学んでました。といった肩書きが一切ない。元々サイバーエージェント自体、営業の代行でスタートした。最近では「アメーバピグ」や「アメーバスマホ」が人気だが、その少し前まで「ネット広告代理店」というのが収益を柱となっていた。それが企業の運命を決める大きなポイントとなるが、最近までシステムを外注していたというのだから、生え抜きのIT企業とは少し違う。
ここで海外のIT企業、例えば、GoogleとかFacebookであれば経営者がカリスマ的な能力を発揮して、世界をリードしていくだろう。しかし、藤田社長に明確なビジョンや将来性というものは無かった。とにかく赤字を脱出する、黒字転換する。全てがビジネス目線なのだ。「アメーバで世界をより良くする」といったビジョンまったく見えてこない。藤田社長は本書や前著で何度も「21世紀を代表する企業を作る」と明言している。実際、経営者としては優れているかもしれない。ただ、21世界を代表する会社=高収益の会社なのか、それとも利益は少ないけれど愛される会社なのか。
アメーバだって当時はお荷物と呼ばれていたし、アメーバ事業部は本社ではなく雑居ビルの中に入っていた。藤田社長は3年で結果を残さなければ辞任するといって、陣頭指揮を取るけれども、その時点で何度か判断を誤っている。これは本書の中にも書かれているけど、短期的に黒字化させなければならないため、目先の利益を追いすぎたという事だろう。
藤田社長に天性の感や抜群の才能はない。じゃあ何故、藤田社長率いるサイバーエージェントが成長しているのか?というと、優れた企業文化や育成機能があるからだ。今のIT企業には珍しく「終身雇用制」を打ち出したり、「ジギョつく」といった独自の新規事業育成プログラムや撤退基準の明確化。この辺は21世紀の経営というよりも20世紀型の古い経営手法だとも思った。その辺の手腕は藤田社長の優れた点だと思うが、サイバーエージェントがこれから発展していくためには、優れた人材システムを作って優れた人材を育成する事が不可避だろう。金で優秀な人材を集めるGREEやモバゲーと比べると、爆発的な成長は難しいのかもしれない。
ただ一つ残念だった点が、本書からは「黒字化するための試行錯誤や、やりがい」は感じるが、結局のところ、それは利益を出すための方法であって。例えば、「ゲームで世界を変える」とか「アメーバで社会を良くする」といったビジョンが見えてこなかった。もっと夢とか語ってほしかった。
藤田社長は今に珍しく、
「経営者」
という言葉が似合う人だろう。まさに、本書は「起業論」。
不可能を可能にするのが起業家です。皆の反対を押し切っても、逆風に晒されても、窮地に追い込まれても、それでも自分が本気で熱狂しているものなら不屈の精神で乗り越えなければならないのです。熱狂は、それを成し遂げるためであれば、さまざまな困難、孤独や憂鬱や怒りを乗り越える力を内服したものだと私は思います。


