ニコニコ動画を観ている方ならお馴染みの夏野さんです。ニコニコを黒字化させた立役者としても有名ですが、ビジネスマンの間ではドコモで「iモード」や「お財布ケータイ」を立ち上げた人と言えば通るでしょうか?本書のタイトル「1兆円稼いだ男」ですが、実際に夏野さんの資産が1兆円あるわけではありません。本人は謙遜していますが、ドコモにもたらした金額が1兆円という事です。本書は仕事術というタイトルが付いていますが、正確には1兆円稼ぐために、こうしろ!ああしろ!といった事が書かれているわけではありません。ある意味では哲学みたいなものです。ビジネスをする上で大切な事がコンパクトにまとまっている。という方が適切かもしれません。
●ベンチャー企業の副社長からドコモへの転職。
夏野さんはドコモのイメージが強いですが、実は中途採用です。最初は東京ガスに就職したそうですが、その後にネットベンチャーの「ハイパーネット」という広告を見る事でネットの接続料が無料になるサービスを提供する会社で副社長を勤めていたそうです。最初の頃は業績が好調だったそうですが、次第に経営は悪化、倒産間際の時に「リクルート」のとらばーゆの編集長を勤めていた方に薦められてドコモへの転職を決意します。夏野さんの格言として「今できることだけを全部やりきる」というものがあって、ベンチャー企業は失敗したものの、夏野さんの中では「やれる事は全部やった」という思いが強かったそうです。
●成功に必要な3つの要素。
成功に必要なものは何か?夏野さんは、こう言います。
・10パーセントの才能。
・20パーセントの努力。
・70パーセントの運。
だから、夏野さんは人との出会いをもの凄く大切にします。
ドコモの「iモード」の誕生に携わる事ができたのも、人と人との運だったりします。後で説明しますが、夏野さんはそれを「仁義と任侠」だと言っています。
会社は何をする場所なのか?
私は会社とは「目的」ではなく「手段」であり「道具」だと思っています。つまり、その会社に長く籍を置き、社内で地位を築くのを働く目的にするのではなく、「会社の利益のため」「社会の発展のため」に、そのとき籍を置く会社をツールとして利用するべきだと考えています。夏野さんは死ぬ直前に「本当に満足のいく人生だった」と言って死ぬにたいと言いますが、実際問題として、ただお金を貰う場所、出世する事だけが目的になってしまうと組織も疲弊しますし、自分が何のために働いているのか?意味が無いとは思います。趣味は定年後の楽しみだ。何て言いますが、実際、定年の老人にできる事は限られています。今を楽しく生きる、それは全力で今の仕事に向き合う事、そして自分の成果で社会が良くなる事とイコールなのかもしれません。「目の前の仕事こそが「未来の仕事」を生む」「実行力のある人間にしか「運」「人脈」「信頼」は集まらない」まさにそうだと思います。
●仁義と任侠。
ヤクザチックな言葉ですが、夏野さんは人との付き合いをWin-Winで考える事が大切だという事を言っています。利害関係で仲良くなる事は社会生活ではあります。こいつと組んだらお金を儲かりそうだ。という定番のものから、仲良くしたら出世しそうだとか。「義理と人情」という言葉もりあますね。しかし、夏野さんが言う「仁義と任侠」の間柄は、契りの杯をかわした兄弟のようなものだと言います。それに加えて、Win-Winの関係を維持する事で、お互い頑張り社会をより良くする事ができる。最低条件として「Win-Win」の関係を維持する事が必要だと言います。
夏野さんはもの凄く人脈に恵まれている人だと思います。
その人脈によって人生を切り開いている。ただ、それが本当に運だけのものなのか?というと、答えはNoだと思います。Win-Winの関係を維持しながら自分自身で人脈を構築している。夏野さんは本書の中で、会社の「チャンピオン=真の実力者」と呼ばれる人。実際に組織を動かしている人は仲良くなれ!と言っています。やはり、利害関係だけではなく、夏野さんが言う「仁義と任侠」の間で繋がった者同士の結束は強いと感じさせます。それは「iD」時の三井住友との交渉であったり、FeliCaの時のソニーとの交渉にも役立っています。
●余談、マッキンゼーとの戦い。
この本で面白かったのが、当時、iモードのコンサルタントをしていたマッキンゼーとの話でした。
当時、マッキンゼーから提案されたビジネスモデルはネットに出店している会社から家賃を取るというドコモにとって安全なモデルでした。それに対して、夏野さんたちが提案したのがドコモが代金の徴収を代行し、そこから手数料を取るというモデルでした。面白いのが、この提案をしたのがモバゲーを運営する「ディー・エヌ・エー」の創業者である南場でした。その後、経営者となって「経営者になった今なら、その事に100パーセント理解できる」と言っています。
●感想
夏野さんってこの本を読むまでは、どんな人なのかよく分かりませんでした。ニコニコ動画を黒字化させた立役者としての手腕は聞いていました。本書を読んで思った事は、短期的な利益や名誉ではなく、その仕事が社会に貢献できるのか?その事を意識していると強く感じました。たぶん、ドコモに在籍し続けていけば社長になれる可能性もあったでしょう。勿論、本書中で会社として利益を上げる事は同然だ。という事を言っていますが、「会社は目的達成のための道具」だと言っているように、会社に属する事が特別な意味を持っているわけではない。その一方で経営者に対しては、「業績悪化=クビ」を意識しろ!と言っていたり、社員と経営者、両方の目を持っている方なんだな、って思いました。


