アベノミクス効果で急激な円安、株高が起こっている。輸出企業は軒並み円安メリットによる増益を形状している。発売が2012年なので今の事情とは少し異なりますが、本書「なぜ日本経済は世界最強と言われるのか」は、多くの人が抱いている「円安=善」「円高=悪」という思いを根底から覆します。正直に言うと、さらさらっと本書で書かれている事に、時々「うんっ?」という部分があります。著者であるぐっちーさん自身、投資銀行で活躍してい金融のプロなので、経済用語なのはお手の物。かなり噛み砕いて書いてありますが、経済音痴の人や実際に投資経験の無い人には少し難しい部分があります。

ただ、それを差し引いても本書は興味深いです。

まず多くの日本人が思っている事として、円高は悪だ。という説がありますが、それは違うと真っ向から否定します。日本は技術立国、輸出立国なので、円高になると景気が原則してしまう。しかし、実際の日本の輸出に占める割合は全体の15%ほどしかない。例えば、会社四季報で調べてみると、約3000社のうち海外売り上げが50%を占める企業は全体の200ほどしかいない。円安になっても恩恵を受けるのはたった200社しかいない。日本は内需国だとぐっちーさんは指摘します。よく貿易赤字が国家破綻を生む、といった事が言われていますが、実際には季節調整済指数に弾き直すと1156億円の黒字だそうです。

年金にしても、高齢者の数は頭打ちでこれからは減少に転じて行くとぐっちーさんは言います。
本書のタイトルにもあるように、日本経済は最強なのかもしれない。ただ個人個人の生活で見ると、世界に比べて貧しい厳しい生活をしているのは事実です。ただ本書を読んで強く思った事は、新聞やテレビがいかにいい加減な報道をしているか、でしょう。著名投資家のウォーレン・バフェット氏が新聞で正しいのは「野球の結果ぐらいだ」と言っていますが、確かにその通りだと思います。今の時代、ネットもある事ですし、自分で調べる事。中身以上に、その事を意識させる本でした。本当にずばずばと書いてあるので、気持ちいいです。

円安になった今とは少し事情が違いますが、それでも興味深い本だと思います。