パラダイス鎖国?聞かない言葉だ。本書で貫かれたキーワードである「パラダイス鎖国」それは本書の中から引用するならば「便利さや物の豊かさでは日本はトップクラスであり、外国への憧れも持たなくなった。そういった日本の様子を著者は「パラダイス鎖国」と呼ぶ」となっており、最近、言われている日本の若者は内向きになった。とはまた違った観点から綴る。本書が出たのが5〜6年くら前なので時代錯誤感は多少はある。しかし、未だに色あせない部分が多いのも事実だろう。
前半ではパラダイス鎖国した日本の現状を、後半ではシリコンバレーと日本の対比などが紹介されている。従来日本が得意としてきた「果てしなき生産性向上戦略」を肯定しつつ、試行錯誤しながら成長していく「試行錯誤戦略」に期待する著者の考えには共感する部分があった。日本はシリコンバレーに比べると、人材的にも資金的にも恵まれているわけではない。しかし、ステレオタイプ的に「今の若者は海外に行かない、向上心がない」というのとは、また違う気もしてならない。
「パラダイス鎖国」の一番危険な点は、外部への興味を自らシャットアウトすることで、外の世界と隔絶され、バランス感覚をなくすことだ。最後に本書の中で著者は「軽やかに、前向きに、少しずつ、開国へ向かってゆこう。ウェブ時代だからこそ」という言葉で本書を締めくくっている。枯れた大地に水が染み渡るように、体の中に入って行く言葉だったりする。今、何がしたいのか分からない若い人には、将来の助けになる本だと思います。