ユーグレナ、この言葉を知っている人は少ないかもしれない。「ミドリムシ」の方が浸透しているかもしれない。ミドリムシ、これはもしかすると世界を大きく変えるかもしれない可能性を秘めている。ミドリムシは、ミネラルやビタミン、アミノ酸といった59種類の栄養素を持つ。さらには、航空機の燃料としても利用できる可能性を秘めているのだ。著者であるユーグレナの社長はグラミン銀行のインターンでバングラディッシュに行っていた。そこで見たのが食料不足などではなく、溢れた食べ物だったそうだ。しかし、大半が米といった炭水化物。肝心の野菜や果物などが不足していたのだ。航空便で送るにも、そのお金が無い。18歳だった出雲氏は落胆したそうだ。
その時、将来は自分が世界を救うと決意したそうだ。

本書はビジネス書でありながら、ベンチャーでの起業を考えている全ての若者に参考になる。

ただ肝心な所、著者は作家ではないので、大事な事がさらっと書いてあったりする。ミドリムシがこれまで利用されてこなかった一番の理由は、その培養の難しさだったという。少しでも他の物質が入ると全滅してしまう。つまり、「美味しすぎるから」。今までの技術だと、1年間に耳かき一杯程度の培養しかできなかった。ユーグレナが画期的だったのは、いかに無菌状態の部屋を作るか?ではなく、ミドリムシが安全に培養できる培養液を開発した所だ。これによって、大量のミドリムシの培養が可能になった。これは革命的な事だ。

しかし、本書の魅力はそこではなく、やはりベンチャースピリットだろう。livedoorの支援を受けて六本木ヒルズのlivedoorのオフィスに間借りしていた、という話があるが、時は丁度、livedoorが検察からの強制捜査を受けた時と重なる。勿論、ユーグレナが粉飾をしていた事実はないが、その余波を受けて経営はうまく行かなかったそうだ。その中でも足を棒にして、必死で営業活動をしていた。ミドリムシの培養自体は画期的ではあったが、ベンチャー企業がすぐに利益を生むほど社会は甘くはなかった。本書で出雲氏はこう綴っている。
自分たちが本当に正しいことをやっていれば、どこかに必ずそれに共感してくれる人がいる、ということだ。
それは出雲氏を起業の道に導いてくれた新聞記者の恩人だったりする。ベンチャー企業というと、素晴らしい技術ばかりに目が行くが、そこには血の滲む思いと、葛藤があったりする。かっこ悪さの中のかっこよさ。日本、いゃ世界を変えたい。そんな思いがあってこそ、ビジネスは成功できるのかもしれない。

文章のプロではない、ただそこから溢れ出す情熱が素晴らしい。
今や資産200億円を持つ大金持ちだが、まだユーグレナは始まったばかりなのかもしれない。

最後に、こう綴っている。
自分が「この分野、この領域で勝負する」と決めたら、その中で必ず一番を目指す。それが僕がベンチャーの経営に関してアドバイスできる唯一のことだ。