ザッポス・ドットコム。日本ではあまり聞かない名前だが、2007年の米小売業協会の調査において、高級デパートやAmazonを抜いて全米で2位を獲得している。経済雑誌フォーチュンが選ぶ最も働きがいのがる企業100社にランキングされている。創設から10年で売り上げ高は10億ドルを突破し、現在ではAmazonに買収されている靴の通販サイトの世界的な巨大企業だ。本書は、そんなザッポスのCEOである「トニー・メイ氏」にスポットを当てつつ、世界を「ワオ!」と言わせるザッポスの企業哲学に迫っている。

トニーが企業家を目指してたのは、かなり早く9歳頃だったという。ミミズの養殖や缶バッジの制作にその起業家精神の一旦をかいま見る事ができる。ただ、勉強はできたものの熱心に勉強していたわけではない、というのがかなり変わっている。大学時代に起業したネット広告の会社リンクエクスチェンジをマイクロソフトに2億ドルで売却し、一躍お金持ちの仲間入りをした。これは意外な話だが、トニーはザッポスの創業者ではない。創業当時から関わっているのは事実だが、最初は投資家としてザッポスに関わっている。

●お金が必ずしも幸せを生むとは限らない。


・私は何かを生み出し、育て、自分が情熱を傾けられることをするのがどれほど楽しかったと考えた。
・テレビにパソコン、自分が欲しいと思う物をリストアップしたが、結局、どれも簡単に手に入る物である事に気づいた。
・結局のところ幸せとは人生を楽しむことであるにもかかわらず、既定のこととしてお金がたくさんあることイコールより多くの幸せだと思い込むように洗脳されている。
・大事なのはお金ではなく、退屈しないことだったのです。

●ザッポスに学ぶ企業文化のつくり方


・会社はただ働く場所ではなく、利益追求を越えた共通の目標を持った集団である事。
・リンクエクスチェンジなどの経験から、お金を稼ぐことを目標にすると会社はとたんに面白みをなくす。大事なのは、お客さんに「ワオ!」という驚きと共に笑顔を届けること。
・どんな仕事にも意味がある。それは単なる仕事以上のものである。
・社員や同僚を家族のように思っている事。
・ザッポスの企業文化を受け入れられる人のみを採用する。

●ザッポスが提供するコア・バリュー


1.サービスを通して「ワオ!」という驚きの体験を届ける
ザッポスでやりがいのある事はお客様に「ワオ!」を届けること。
2.変化を受け入れ、変化を推進する
変化を熱烈に歓迎すること。
3.楽しさとちょっと変なものを創造する
誰とでもウイン・ウインの関係。
4.冒険好きで、創造的で、オープン・マインドであれ
失敗しない=適切な利益を取っている。
5.成長と学びを追求する
個人的にも仕事的にも成長する。
6.コミュニケーションにより、オープンで誠実な人間関係を築く
あるがまでいる、最善の判断をする。
7.ポジティブなチームとファミリー精神を築く
チームでありファミリー。
8.より少ないものからより多くの成果を
「もう十分によい」と甘んじたりしない。
9.情熱と強い意志を持て
情熱は燃料。
10.謙虚であれ
急成長の秘訣。

●ザッポスの素晴らしいカスタマーサービス


ザッポスの凄さはやはりお客様に対するカスタマーサービスでしょう。

・お届けと返品の両方で送料無料
・365日間返品可能
・最長で6時間にも及んだお客様とのやり取り。
・商品がザッポスに無い場合は他社のサイトをおすすめする。
・サポートにマニュアルはない。
・企業文化こそブランド。
・ウェブサービスの一番上に電話番号。
・ザッポスの一番の原動力がリピーター顧客とクチコミ。

●感想


日本ではサービスを展開してないので詳細な感想は分かりません。ただ、顧客こそが企業の生命線であるという記述にはもの凄く共感できます。どの企業であっても提供するサービスがあって顧客が発生する。その顧客をファンにする事で安定的な売り上げを持てる。売って終わり、というビジネスモデルからずっと使ってもらえるのビジネスモデルへ、本書でも綴られていますが、ザッポスモデルは全ての企業に応用可能なのかもしれません。400ページ近くあるので少し読むのが大変ですが、顧客に関わる全ての人におすすめです。