かつては日本を代表する家電メーカーとして君臨していた松下電機産業(現:パナソニック)。当時はその資金力の豊富さから「マツシタ銀行」とまで言われるようになった。現在のセブンイレブンを越える販売網(パナソニックショップ)を有していた。しかし、今や決算で過去最高7000億円近いの赤字を計上。社運を掛けたプラズマ工場もプラズマテレビ自体の低迷でお荷物的な存在になっている。パナソニックと言えば、誰もが知っているであろう経営の神様である松下幸之助氏が有名だろう。

●パナソニックの栄枯盛衰。

本書は、そんなパナソニックの栄枯盛衰を探りながら、現在のパナソニックの苦心の原因は何なのか?という点について書かれている。簡単に本書を要約すれば、松下幸之助の後継社長である「山下俊彦」「森下洋一」「中村邦夫」ら経営陣が会社の伝統や社員からの意見を聞かず暴走した。という事が挙げられる。最近の例では、パナソニックの運命を決めるプラズマテレビに関して、社員から「液晶テレビを作って欲しい」と提案されたにも関わらず中村氏は「松下はプラズマで行くと決めたんだ。ごちゃごちゃ言わずに、アメリカでプラズマをちゃんと売れ」と一括している。

●自慢の系列店システム、アナログからデジタルへ。

破壊と創造というサブタイトルが付いているが、パナソニックがそれまで強みとして系列店は今や壊滅的な状況になっている。大店舗法の改正によって大型化した家電量販店。パナソニックは系列店を軽視し、大型の家電量販主流の販売を加速される事になる。しかし、大量発注による販売奨励金などにより利益率は確実に低下していった。この本で衝撃的だったのは、当時のブラウン管テレビ、ソニーの「ベガ」、シャープ、そしてパナソニックの「画王」3台を比較してみると、一番画面が汚かったのはパナソニックの製品だった。

ソニーに筆頭されるように、時代はアナログ処理からデジタル処理に変わっていた。そこでパナソニックは完全に後手に回っていたのだ。本書の魅力は何と言ってもパナソニックの人間模様が垣間見える点だ。石油ファンヒーターのリコール問題のように、結局は誰も責任を取らない構造になっていた。社長を辞めれば会長になる。それは当然の事かもしれないが、会長が常に影響力を固辞し続けているのだ。

●パナソニックとソニーの共通点。

これはソニーにも共通する事だけど、組織の腐敗や混乱な確実に業績に影響する。栄枯盛衰、数々の企業が繁栄と衰退を繰り返していたが、やはりそこには強烈なリーダーシップと責任を取るリーダーの存在がいた。この本のもう一つの魅力は「松下幸之助氏」が神格化されていないという事だ。書店などには松下幸之助の経営哲学を綴った本が山のようにある。確かに、幸之助氏が構築した「系列店」を基軸とした販売手法などは評価されるべぎだろう。パナソニックの基礎を築いたのは間違いなく幸之助氏だ。しかし、幸之助氏の死去後、パナソニックは完全に間違った方向に進んでしまった。

●物語としての面白さ。

本書はその辺を丹念に調査しながら綴ってある。物語を読むように、ぐいぐいと引き込まれていく。結局、本書の中にはパナソニックの明るい未来は描かれていない。

ただ著書は4Kテレビが家電業界の未来を救うと綴っている。
松下幸之助の神格化、そして権力逃走、無責任、この全てをすっとばしてくれるリーダーが必要なのかもしれない。普通に身近な物語として面白い。ただ、僕の自宅にパナソック製品商品が1つも無い事はお伝えしなくてはならない。