TPPや消費税増税、そして家電メーカーの大量リストラなど、日本を取り巻く環境は厳しい。そんな時代に生き抜くためには、どうすれば良いのか?大前研一さんが語る。本書は雑誌「SAPIO」に連載されていたものに書き下ろしを加えて編集されたもの。大前氏は、まえがきで、1人1人の「稼ぐ力」が求められていると指摘する。まが取り組むべき事は「仕事の再定義」だと指摘する。企業にとって一番大切な資源は、資産や特許なのではなく、「人材」だと言う。僕もこの部分に同意だ。企業の本音として、優秀な人材がいれば、いくらでも採用したい思惑がある。国家にとって重要なのは「雇用」なのだという。

●本社機能は30人でいい?

シャープやパナソニックに代表されるリストラ。1万人単位でリストラが行われ新聞やメディアで話題になるが、それでは生温いと大前氏は指摘する。究極的に本社には30人もいれば今の企業運営は成り立つと言う。えーっ!という反応だろうけど、スイスに本社を置くネスレなどが利益の90%近くを売り上げている。日本の花王などがユニリーバやP&Gに負けている理由は、やはり海外進出の遅れだろう。

●ハードスキルとソフトスキル。

2030年に生き残れるグローバル人材になるためには、大きく分けて2つのスキルが必要だ。1つは「ハードスキル」だ。具体的には会計、財務、マーケティング理論、統計学などビジネスで必要とされる"道具"である。
もう1つは「ソフトスキル」だ。前出の3つの問いがまさにそれであり、民族・国籍・文化・言語・宗教の違う人たちとコミュニケーションをとりなら、ビジネスを円滑に進める能力を指し、もちろん英語力が前提となる。
その上で大前氏は大卒程度のスキルではダメという。世界と比較して就職後に再度大学に戻って勉強する人が圧倒的に少ないと指摘する。

●今こそ50歳定年制の導入。

最近では、定年を65歳まで延長するそうだ。しかし、その裏では60歳を頂点に少しずつ給料が下がる。定年を迎えるまで何とか職を維持しようとする意識が高まる。その点を考慮して、大前氏は「50歳を低定年にして、元気なうちに第二の人生をスタートさせる」という事を提案している。会社を起こすのも良し、また学び直すのもいい。これによって若者にさらなるチャンスを与える事ができる。

●そこそこの給料でいいという若者の限界。

最近では、草食系男子といった言葉をよく耳にする。ゆとり教育の弊害という言葉もよく聞く。それを如実に表しているの調査がある。若手社員に海外で「働いてみたいとは思わない」という調査で、04年の24%から07年には36%、10年には49%、13年には58%に達している。これから日本が世界的に影響力を失っていく事を考えると、内向きな若者の存在は自分の権力を手放さない老人よりも問題です。

●SoftBankのスプリント・ネクステル買収は失敗?

SoftBankが約2兆円で買収したアメリカ携帯第3位のスプリント・ネクステル。それに関して、大前さんは、「国土の広いアメリカで莫大な設備投資の費用をSoftBankが負担できるのか?」という疑問符を挙げながら、それに加えて最近では「LINE」などの無料通話アプリによって月額料金の低下、携帯キャリアは土管屋になりつつある。その上で、世界的な流れから「ドコモ」と「au」が合併した方がいいのではないか?という指摘も興味半分で面白い。

●偏差値教育は愚民政策?

もはや国民ID並みに通用するようになった偏差値。学校を決める際にも自分の実力を計る上でも重視されるものだが、偏差値教育を導入したある政治家の声として大前さんはこう聞いたそうです。
私が「日本はこのままいくと若い人たちが不満を募らせて、クーデターを起こすのではないか」と懸念を示したところ、その政治家は「大前さん、その心配はないですよ。国にも、アメリカにも逆らわない従順な国民をつくるために「偏差値」を導入したのですから」
本田やヤマハなどが勃興したのは、日本の教育システムにハマらない、ある意味で自分で学んだ人間によって生み出された。そういう縛られない人材が今後は活躍するではないか?という。

教育バウチャーや英語教育、そしてグローバル。やはり賛否利用論あるけど、人、一人という単位で見れば大前さんの主張には説得力がある。ただ、大前さんが学長のBBT大学がベタ簿ボメされていたのは、相変わらずだなーと思いました。