欧州のエネルギーシフト、日本の3.11以降の欧州におけるエネルギー政策に迫ったルポ。
原発をめぐって欧州では意見が二分している。

新規の原発建設を続けるフィンランド。原発依存度の高いフランス。風量や太陽光といった自然エネルギーにシフトしつつある「デンマーク」や「ドイツ」。その対応は各国によって異なるようだ。原発大国として知られるフランスでも、原発に否定的なオランド氏がサルコジ氏を破って当選した。欧州全体で「1.温室効果ガスの1990年比で20%の削減」「2.自然エネルギーの割合を20%にする」「3.エネルギー効率を20%改善」といった目標がある。ただ現実的に環境という側面もあるが、それぞれ経済的な悩みも抱えている。



例えば、水力発電に恵まれないフィンランドでは原発の建設を進めている。日本と大きく違う点は、オンカロに最終処分場を建設した事だろう。日本が宙に浮いている事に対して、フィランドでは解決策を見いだしている。ただ、フィランドで原発が進む背景には経済界からの声もあるようだ。安価な電力を提供する。それはイギリスも似たようなもので、本書のテーマは「エネルギーシフト」ではあるが別の意味では「お金との兼ね合い」と言い換える事もできる。

イタリアでは国民投票の結果、54%の得票率のうち原発凍結賛成が94%に達している。その一方で、政府や議会の移行で脱原発に突き進む例もある。スイスだ。原発依存度が4割を占めるなかで、2034年に原発を停止する事で話が進んでいる。スウェーデンでも議会で原発廃止が決定している。

石油やガスといった選択肢も勿論あるだろう。原発を廃止するのなら、そちらに依存する事もできる。でも欧州では石油を他国に依存する事に対する強い懸念がある。欧州各国それぞれが新しい形のエネルギーへとシフトしつつある。つまり「エネルギーシフト」だ。

固定買い取り制度による弊害、風力発電による環境の破壊、そして高騰する電気代。勿論、全てが正しいという事は言えないが、エネルギーが生活を支える重要なものだという意識は強い。ここから日本は何が学べるだろう?国家が、企業が、ではなく、我々がどうしたのか?を考える必要があるだろう。欧州はすごい、その一言で片付けられない深い思いが胸を打った。