アベノミクスには色々な思いがある。株の上昇で利益を出した者、アベノミクスによって輸出が伸びた企業。しかし、賛成がある一方で絶えず批判もある。アベノミクスのインフレ政策によってハイパーインフレが起こるというものが筆頭。専門用語で言えば「リフレ」と「反リフレ」に分かれる。本屋に行けばどちらの本も大量に置いてあるので、少し迷うかもしれない。本書は簡単に言えば、リフレ賛成派の立場を取る。高橋氏はアベノミクスの3本の矢。その一つ目の金融緩和に関しては、満点を付けていいと言う。本書によけれれば、アベノミクスはA3の紙1枚で説明が付くと言います。



(1)中央銀行がマネタリーベースを増加されると、インフレ予想率(期待インフレ率)が半年以内に高まる。
(2)インフレ予想率が高まると、実際のインフレ率に変化がなくても、実質金利が低下する(なぜなら、実質金利とは名目金利−インフレ予想率だからだ)
(3)その後、半年〜2年間のタイムラグを置いて、輸出、消費、設備投資が増加する。その結果、実体経済が改善され、実際のインフレ率、および賃金がほぼ同時に上昇する。

・以上の過程において、資産価値(株価、不動産投資など)は上昇し、為替は円安になる。


Q1.資産価格の上昇は、一部の富裕層だけを儲けさせるのではないか?
A.資産効果を通じて消費が伸び、経済全体に波及していく。

Q2.アベノミクスは弱者を虐げ、格差を拡大するのではないか?
A.インフレでもデフレでも、頑張る人は頑張り、手を抜く人は抜き続ける。

Q3.アベノミクスはインフレを目指すというが、インフレはお金の価値が減ることだ。
A.「すごい」インフレは避けるべきである。

Q4.本当にインフレになったら、止める術はあるのか?
A.「すごい」インフレは容易に避けられる。

Q5.大胆な金融緩和はバブルの再来を招くのではないか?
A.適切な規制があるかどうかで差が出る。

Q6.本当に(自分の)賃金は増えるのか?消えたとしても、インフレ率のほうが高くなるのではないか?
A.賃金が増えるまでにはタイムラグがある。

Q7.円安で原油価格(ガソリンや灯油など)や食糧の価格が上がり、スタグレーションを招くのではないか?
A.円安による輸入価格上昇は、経済成長で十分にカバーできる。

正直、僕は専門家ではないので詳細な解説は避ける。でも、民主党政権やそれまでの政権と大きく違う点は長期的なビジョンで物事を語っている点だろう。明日、明後日の支持率でなく、1年後、5年後の日本。本書ではそれを様々な角度や視点から解説しているが、ある意味で「アベノミクス」が凄いのではなく、アベノミクスは経済分野においてデフレ期に最適な行動を取っているという事が言える。日本はインフレなのではなく、長引いたデフレだ。より安いものを求めた結果、めぐりめぐって賃金も減って行くデフレになっている。

簡単に言えば、アベノミクスはデフレをゆるやかなインフレに持って行く政策だ。
そらに言えば、それは日銀がお金を大量に市場に流す事で成立する。

ただ、一つ気になった点は高橋氏が「TPP賛成」に向いている点だ。さらっとしか触れられていないが、やはりその辺は意見が分かれそうだ。ただ、新書の範囲ではコンパクトに丁寧にまとめてある。一つの意見として参考になるだろう。